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ビカットマン  作者: 蟹谷梅次
10 弾丸
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 十一月七日。木曜日。

 岩手県警・愛星友対策本部。


「まずは、改めて自己紹介をしよう。私は国際特別警察機構〝ISPO〟直下防衛組織『尋常維持局』所属の祓い屋、飛騨峰志郎。君を困らせた固有霊術〈環綻〉は易しく言うと、『面Aから面Bへの物体のワープ』だ。木の幹を面Aに設定し、直線で結んだ向こう側の壁を面Bに設定し、面Aに弾を撃ち込めば、弾は面Bから出てくる」


 志郎の説明に智和が「なるほど」と言った。


「例えると、昔のゲームなんかで、画面端にキャラを走らせると、もう一方の画面端からそのキャラが出てくるみたいな……」

「それ」

「固有霊術というのは、なんだろう……ズルいな……」

「君にもその素質はある」


 たしか、ひと握りの天才のみが固有霊術を芽生えさせるのだったか。


 そして、この男はさらっと詠唱の破棄をしていたが、それもたしか天才中の天才にしか許されない神業であったはず。


「それで、本題ですが……」


 若い警官・戸田(とだ)春樹(はるき)がオズオズと割って入った。


「異態肉彦がもう一人いる、というような事を言っていたそうですが」

「おそらく、いる。俺はかつてその光の力を持つ異態肉彦に家族を殺された。……俺の知る異態肉彦は、『記憶を映像や写真にできる』固有霊術を持つ女に頼み込んで写真にしてもらったものがあるが……このようなもので」


 山の中に佇む、一つ目の怪異……肌は白く……装甲のような、ただの布切れのような、よくわからない衣料を身に着けている。


『これは!』


「……ん?」

「どうかしたかい?」

「いや、神戯閃光児……つまり、私の中にいる怪異が、身に覚えがあるらしい」


『これは、〝邪視〟だ! 邪視は堕ちた神がなってしまう怪異で、神だった頃の力の破片として、光の力を持つ。僕が光の力を持つのも、神を食った人間……神としての格が落ちたからなんだ』


「邪視という怪異らしい。邪視は堕ちた神がなるもので、光の力を持つのは、神だった頃の力の破片だそうだ」

「なるほど、邪視……」

「……しかし、運が良かった、とも言っている。この写真にいる邪視はまだ人間で言うところの幼児のようなもので、こういう怪異が成体になるには、私たちのように、人間と融合する必要がある……のだそうだ。飛騨峰志郎さん、あなたが死ななかったのは幼体の邪視があなたの霊力に勝てなかったからだ」

「…………。そうか」

「しかし、これが異態肉彦というのはどういうことなんでしょう」


 春樹の傍にいた木本(きもと)夏子(なつこ)という女性警官が言うと、志郎が頷く。


「おそらく異態肉彦という名前は大昔から継承されてきた襲名制なのだと思われるが……と、すると……異態肉彦というのは、こいつと契約している何処かの術者なのかもしれないな」

「であるとするならば、しばらくのうちはコイツの痕跡を追うのが早そうだけれど、尋常維持局とやらはどうなっているんだ?」

「邪視というのが出たあの山を全域封鎖して、管理している。奥州市にある山だ。忌死山(きしやま)という」

「面白い名前ぇ……」

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