32
智和がやってくると、異理箱の存在を話し、「では寺や神社に頼み込んで、お祓いなんてしてもらおうか」という事を話し合った。
しかし、寺も神社も、別にそういう特別なものを相手にすることを想定したつくりをしていないので、断られる。
ではどうしようか、と頭を悩ませていると、空明の父が「やっほー」とやってきた。
「いい人を知っているので君たちに紹介してやろう」
「いい人? いい人というのは誰です」
「祓い屋だ」
彼がびくんと跳ねて、神戯閃光児と入れ替わったのがわかる。
「並大抵の祓い屋では、異理箱は祓えない。それどころか取り憑かれてしまう可能性だってある。おかしな真似をして、箱の効力を強めてしまうのはあまり嬉しいことではない」
現在、箱は智和の兄・野村博康が所有している山にぶち込んだ仮説の小屋に封印してある。
小屋は周囲を木で桶のように囲み、コンクリートを流し込んで固めているので、外に出てくることもあるまい。
「大丈夫! 彼は並大抵じゃないから」
「よろしければ頼りたいものだけれど……」
「あまりアテにはならんと思うなあ」
訝しむ神戯閃光児を椅子に座らせながら、優心は「その人どんな感じなんですか」と訊ねた。
「なんていえば良いんだろうなあ、よくわからんのだけれど……ちょっと変なやつなんだよねぇ。まぁ、会ってみればわかるよ」
「お名前は?」
「寒河江ハヂメ。とりあえず呼ぶね」
「すぐ来られるんですか? 今何処に?」
「たぶん東京かなあ」
空明は「父はなぜ祓い屋の知り合いがいるんだろう」と思う。
が、やはり……考えるのはやめた。
思い返せば、空明自身は拾われた身である。
実の父と母は、優心や朝飛から聞いた通りなのだろう。
異態家という愛星友と付き合いをしていた祓い屋の家系。
自分や兄の実父は、その付き合いが嫌になって家を抜け出し組織と戦って……そして、何人かの子供をのこして死んでしまった。
もしかしたら、実父はいまの父となんらかの付き合いがあり、実母はその付き合いを頼って自分を預けたのではなかろうか。
実際、兄・尾島青空の育ての親はそのようなものだったらしいし。
「……あっ、うん。みんなー、朗報。今来れるってー」
「今?」
じゃあ来るまでミスターバカの怪我でも治しておこうかな、と負傷部に手を当てていると、突如床が光り始めた。
「おや」
どうやら転移霊術か。赤く広がる光の空間から男が現れる。
「君、その転移霊術すごいね」
「どうも。君は神か。早く成仏なさいね」
「心がけているよ」
男は寒河江ハヂメである。
「異理箱、見つかったんだって? 最悪だね。どこにあったのかな」
「ほら、高校。ウチの空明の通ってる」
「はあ、なるほど。世も末と来た。オーケー。預かるよ」
「ちょいと待ってくれ。君のような人下ゆにどうにかできるものなのか、という疑問は未だ晴れていない」
「私の霊術が関係しているね。固有霊術、なんてものがあるんだ。君はギリギリ知らない世代かな。昭和の頃から現れだしたからね。おそらく、その子にもある。相当な才能がないと芽生えないもので、私は天才だった。君も今に生まれていれば芽生えていたろうに。なんで大昔に生まれちゃったの? もったいない」
「固有、霊術……」
「その人にしか扱えない霊術。霊能異理をもっと身近にした感じかな。それじゃあ実演をしてあげよう。私はね、凡人どもに私の才能をありったけ見せびらかすのが大好きなんだ」




