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ビカットマン  作者: 蟹谷梅次
8 木箱・2
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 そのミスターバカは走りながらどうにか人のいないところへと考えていた。


 頭に浮かべていたのは北上市の地図である。


 北上市といえば中心地域以外はあまり栄えている方ではないが、何処へ行ってもちょくちょく人がいる。


 最近できたばかりの高村光太郎記念館ちかく、県道二五二号のあたりはすっからかんだからそこがいいだろうか、とかなんとか考えながら走っている。


 こんなちまっこい木箱ひとつのためにここまで頭をぐるぐると回らせなければならないのは、世の理不尽さを表しているような気がしてならない。


 禿頭は追ってきている。


 変身できれば光になって一気にそこまでいけるのだけれど……彼の足では、十八・二キロメートルはあるわけだから、三十分ほどかかる。


 禿頭は懐から拳銃を取り出し、彼の脚を撃った。


「ぎぃっ」


 彼は転がり、「下水道マンホール」看板のポールに頭を打ち付けた。


 それでも、異理箱は離さない。


「脚を撃ったから、おまえはもう逃げ出せないよ」

「ハァ、ハァ……ハァ……」

「一応、もう片方の脚も撃っておこうかな」

「いてっ」

「撃ったもん」

「ハァ〜〜……最近めっきり良いところなしだ……こんなんじゃ、元々ない愛想が尽かされちまうな。俺は寂しいのが苦手だから、彼らがいないと生きていけない。彼らが付き合ってくれている今のうちには……まだ……」

「わけのわからないこと、言うね」

「ハハ。たしかに分からんことを言った」


 イグナイター持ってくればよかったな、と思った。


 もったいぶって、自室に置いてきたのがいけなかった。


 もしあれがあれば、神戯閃光児が大忙しで変身に力を割けないという時にも自分単体で変身することができた。


 ないものを乞っていても仕方がない。


 これからは常に持ち歩いたほうがいいかもしれない。


「……ハァ……」


 足が痛い。


「召喚霊術」


 地面からモシリュウが現れ、禿頭をくわえて上げた。


「食われる!」

「モシリュウは多分……草食だよ……」


 彼は携帯電話を取り出して、智和に「愛星友の信者かなにかを捕まえたからすぐに来てほしい」と留守電話をいれて、その馬にへたり込んだ。


 頭を打ったのでとても痛い。


 しばらくすると、空から「おおい」という声があった。


 見上げてみれば愛並媚がおり、「どうした」と優心が叫んでいる。


「見てのとおり、両脚を撃たれたのであと二時間は歩けない」

「なんで二時間後には歩けるんだよ」


 朝飛は彼の召喚したモシリュウを見て「なんか前よりおっきいな」と思いながら、次に彼を見る。


「最近めっきり良いところなしだ」

「なにが」

「数ヶ月前なら弾丸なんて回避できた」

「お前もう人間じゃねぇよそれは」


 取り敢えずこのハゲ縛り付けておくか、とロープを取り出す。


「恐竜消したら? 見つかったらたいへんだろ」

「私の生得怪異も君たちのように現実の範囲内だったらよかったのに。……まぁ、こういう事を言っていても、何も始まらないのは分かっているのだけれど、愚痴は愚痴として吐き出しておきたいじゃないか。そういえば、尾田空明くん、君は空は平気だったか?」

「えっ? あっ、はい」

「なら良かった。風が気持ち良かったろう」


 朝飛は禿頭の入れ墨をスマートフォンで撮影して、「これ一応記録しておいたほうがよくない?」と彼にアピール。


「嫌な世の中だ……こんな事、やってる時ではないというのに。我々は今すぐにでも、愛星友を倒すべきなのかもしれないな……」

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