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ビカットマン  作者: 蟹谷梅次
7 木箱・1
30/56

30

 走り去っていった彼を追って、禿頭もまた去っていった。


 しかし、それだけでは済まない。


 もうひとりいた。


「目をつけられてるな、俺たち。尾田、逃げられるか? 足に自信は?」

「ああ、はい。あります」

「逃げるぞ!」

「わかりました」


 迎え撃ったほうがはやそうだなあ、と思いつつ空明は優心と朝飛を抱き上げて、フェンスを飛び越えた。


「佐々木さんたちは、マンガ・アニメ研究部のいる教室に行っていて。あそこは特別だから」

「えっ……えっ!?」

「大丈夫だよ。うん」


 もう一人の禿頭も同じようにフェンスを飛び越え、追ってくる。


「お、お前何者だ」


 優心が言う。


「尾島先輩は、どうやら何か理由を知っているらしいですね。こういう、怪事件の。……で、あれば……あなたがたもその関係者と見ていいか。僕は尾田空明という名前でありますが、それは、僕を拾ってくださった人がつけてくれた名前です。本当の名前は、異態(いざま)骨曇(こつずみ)

「い、ざま……」


 尾島青空──異態肉彦の血縁者。


「異態が何かご存知で?」

「あいつも……尾島青空も異態だよ」

「えっ?」


 路上駐車の原動機付自転車に直撃。


「前見て走れ! 召喚霊術──」


 朝飛は愛並媚を召還し、空に浮かび上がる。


 禿頭はそれを見上げ、ニタニタとした笑顔のまま「逃さないからなあ!」と叫んでみせた。


「真っ昼間に大声出すやつがあるかバーカ!!」

「大丈夫か?」

「は、はい……し、しかし驚いたな……尾島先輩は、どうしてそれを黙っていたんですか」

「知らないんじゃないのか? 資料にお前のことなんか書いてなかったし」

「資料、ですか?」

「ああ」


 愛星友の基地に行って資料を持ち帰ったという話をする。


 その資料の中身も。


「えっ。じゃ、じゃあ……もしかして、まだ二人いるんですか」

「だろうけれど……今はそれより……」


 目の前に禿頭が現れた。


 どうやら二十メートル以上離れているところを、跳躍したらしい。


 そんな事が可能なのか──と考え、やめる。


 兄弟の跳躍力を考えると、そういうもんなんだろう、と。


 カルトジャンプ力とでも言うべきか。


「こういうれんじゅうがいれば、いつだって人が不幸になるんです。先輩方、どうかお目を瞑って──……行くぞ、経立(ふったち)


 空明はそう言い、彼は外向きのカエルを両手で作り召喚霊術を行う。


 すると、空明の背中から魚のような怪異が現れ、その怪異は透明な美しい水を伴い大きな円を描き、空明の胸に飛び込む。


 召喚霊術──アカントステガ。

 そして、その発展。


「変身」


 禿頭は突如溺れるような感覚を抱き、視界はぐんと落ちる。


「僕の相棒・経立は三億六五〇〇万年生きたアカントステガが妖怪・経立になったもので……僕はこいつの力を借りる事で神に等しい姿になれる」


 茶褐色の強化皮膚、青い腕部・脚部・胸部の生体装甲、青い複眼。


 ビカットマンによく似た形の、まったく別の戦士。


「マジかよ」


 禿頭はニタニタと笑いながら、札を取り出し、蛇を召喚した。


 青の戦士はその蛇を殴り潰し、禿頭の頭を掴み上げる。


「こいつどうします」

「殺すのは無しだよ」

「何故。こいつは人を殺しても平気という悪人だ。殺したほうが世のため人のためになる。殺してはいけない理由がない」


 その言葉を聞き、優心は「あいつの弟だ」と思ったが、それと同時に「あいつの血縁とは思えない」とも思った。


 朝飛は人目につかないところで愛並媚をおろして友人の懐からロープを出すと、電柱に禿頭を縛りつけ、智和に電話をしてとっとと捕まえるように、とした。


「甘いですよ」

「お前が人を殺したら、悲しむ奴がいるんだよ」

「誰です」

「あのバカだろ」

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