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信じられない速度で進路変更を余儀なくされてしまった。
こういうところで我を貫き通せない自分が情けなくもあるが、であれば最初から彼らのもとに帰らなければいい話。
おそらく、自分は彼らの優しさに甘えて、自分の阿呆な決断を止めてもらいたかったのだろうな……と、ここに来てさすがに自覚せざるをえない。
とぼとぼと歩いていると、原動機付自転車がとまる。
「やーっ、ミスターくん。お久しぶりじゃないの」
「……猫野洋子さん。お久しぶりです。お元気でしたか」
「まーね。へへ。なんか雰囲気変わったね。ロボットじゃなくなっちゃったのかな」
「そうかもしれません」
彼女は「いいね、成長だ」と言って彼の頭を撫でた。
「猫野洋子さん。猪地光輝くんはお元気だろうか」
「ん? 最近はとっても元気だよ。君のおかげだ」
「良かった。ほんとうに。……じつのところ、私は彼に感謝なんです。彼が誰かの平和を寝返る子供であったから、私は彼の心に応えたいと思えた。彼がくれた新しい名前が私の中に根付こうとしてくれるから、私はここに立って居ることができている。彼がくれた笑顔だけが、宝物だ」
「そっか。なんかよく分かんないけど良いね」
「はい」
考えたいことはまだあった。
しかし、頭がうまく働かない。
考えるのはあとでもいいか……。
彼はとぼとぼと歩きながら、やがて中古品店に到着した。
「さて、お買い物をしてしまうぞ」
『何を買うんだい?』
「少し試したいこともあるから、大した物は買わないよ」
それから彼はいくつかのパーツを購入すると、陸前高田にあるガラス細工の職人のところへ、依頼の書を送った。
「ガラスで筒を作るのかい?」
「うん、そうだ」
部品がすべて揃うと、組み立てに取り掛かり、優心はその様子を見ながら、取り敢えず黙って見守ることにした。
壁にはポリタープと、そのうえにはB0サイズの紙が貼り付けられ、そこには色々な計算式や、設計図のようなものが書き込まれている。
おそらくこれを正しく理解するには相当な学が必要なのかもなあ、となんとなく察せられる。
「できたあ!!」
作業に入って五日目、十月二日のことだった。
「明日から学校行けるか?」
「まぁ、行けるよ。すまないね、熱中すると周りが見えなくなる」
「五回くらい金的したのに無視してきたもんな。何ができたんだ」
「やってみればわかるよ。部屋を閉めて、サングラスをかけて」
言われたとおりに環境を準備すると、彼は神戯閃光児に対して「出てきてくれ」と言った。
「僕が出てどうなるんだい?」
「君の力の一部をこの装置のなかに入れることはできるかい?」
「構わないけれど、そらでどうなるんだい?」
「ハハ。どうなるんだろうな」
神戯閃光児が力の一部を折畳式ナイフのような装置のなかにいれると、ガラスの中に白い光が灯った。
「この折り畳まれているプレートの内側には、鬼剣舞についてのあれやこれ、そして猪地光輝くんから聞いたビカットマンの設定が刻まれている。そして、プレートを展開した際に、小型光電子倍増管が作動するようにスイッチがはいる仕組みだ。つまり、簡単に言うと……」
彼は赤いスイッチを押すと、プレートがバネに押し出されてビンと立ち、それと同時に「カァン!」という音がして、つよい光が放たれた。
そして其処にはビカットマンが現れた。
「なるほど、力の継承か」
「どういうことだ?」
「もし私が愛星友を潰すことが出来たなら、私はビカットマンをやめるし、神戯閃光児にも休んでもらいたいから、つまり……これが必要になる。イグナイターだ」




