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ビカットマン  作者: 蟹谷梅次
6 気丈
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 昔からひとりぼっちだった気がする。


 けれどそれはおそらく勘違いで、不幸になりたがっている証拠。


 幸せになりたいと言っていたって、言うだけで満足してしまう。


 ひとりぼっちになりたくないのなら、意地でもついていけばいい。


 ひとりぼっちになりたくないのなら、人望のある男になればいい。


 けれど、彼には人望というものの稼ぎ方がとんと分からない。


 限りのある命を、そのすべてをどのように使えば、誰彼構わず好かれる人間になれるのか分からない。


 加賀美優心はきっと自分のことを嫌っている、と思う。


 何故なら無理やり家に居着いたから。


 無理やり居着いてきたよくわからない男に対して心を開き友情をおぼえてくれる様な都合のいい展開は望んでいない。


 そもそも加賀美優心と彼の思想は真逆であったような気がする。


 では、新沼朝飛はどうだろう。


 新沼朝飛も、彼から見ると、おそらく嫌われている。


 何故なら、好きになる理由がないからだ。


 新沼朝飛はクラスメイトだから、おそらくほかのクラスメイト同様に余計なことを言っていらんことをする彼のことを嫌っているに違いない。


 一緒にいてくれるのは、社会一般で言う「恩」があるからであり、つまりそれは、彼にとって不本意極まりないものであると考えられる。


 であれば、当然自分に対するストレスだとか、ヘイトだとかはたまっているのだろうな……と彼は考えた。


 なら当然、嫌われているに違いない。


 彼らだけでなく、ほかの人間どもも。


 警察のれんじゅうも余計な事件をおこす彼の事を嫌っていてもおかしくはない。


 優心の祖母は自分の孫と喧嘩をして図々しく家に住み着いている彼のことを嫌っていなければおかしい。


 クラスメイトは当然のこと。


 佐々木美穂も。


 佐々木美穂の母も。


 朝飛の母、兄、姉たちも。


 全員が全員、自分のことを嫌っていないとお話にならない──と、彼は考えていた。


 そうでなければおかしいから。


 自分では真面目に生きてきたつもりだった。


 普通の人間がどのようにしているのかを真面目に学習して、普通の人間らしく生きてきたつもりだった。


 どうして自分がそんなに嫌われなくてはならないの。


 本当になにもわからない。


 わからない。


「……おい、どうした? 大丈夫か?」

「大丈夫だ。じゃあ、君たちは此処にいなさい。私ひとりで行って、出てくるから」


 車内。


 目の前には、愛星友の拠点であろう四階建ての建物がいくつもある。


 彼は車を降りると、ホワイトシャツの裾を捲りあげた。


「ほんとうにひとりで大丈夫か?」

「大丈夫だ。心配には及ばない。何度も言わせるな。鬱陶しい」

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