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同級生と喧嘩をしたというので、優心の祖母は泣いた。
その啜り泣く声を聞きながら、優心は部屋のドアノブをギチッと握りしめた。
興奮してしまうと、ああいうふうになってしまう。
理屈で物を考えるのが苦手なのだ。
昔はそんな事なかったはずなのに、親が死んでしまってからこういうふうになってしまった。
祖母を泣かせてしまった。
「失礼します」
鍵を閉めているはずの部屋の窓が開いて、彼が入っていた。
「…………は?」
「いやあ、学校から近いところにあるらしく。来てみようかと思ったんだ。君、ケーキは好きかい? 学校の近くにあるところで買ってきてみた」
「なんで……鍵しめてたろ……」
「……?? 鍵は開けたんだ。そこはまあ良いだろう。君と君の保護者とお話に来てね。よろしければで構わないのだけれど、お話はできないか?」
家の下から「はいれたか〜?」と声がある。
新沼朝飛が手を貸したらしい。
「じゃあ、お話しよう。こういうのは、その日の内にやったほうが良いんだ。感情が高ぶったまま、『普通』から背こう。ほら、部屋から出る。私と一緒なのだから気まずくないだろう」
「気まずいだろ……」
「そうかい?」
「そうかい、って……」
こんなキャラだったか? と不思議になりつつ。
流されて、部屋を出た。
「おばあちゃん、どうもはじめまして。私は今日この男と大喧嘩をしました。その事についてと、その事以外にもお話をしたく、来ました」
「…………う、うちのこが……」
「つちのこ? まぁ、私個人の意見では、つちのこは飯を食いすぎた蛇に過ぎないと思っています。それで本題なのですが、私をこの家の子にしてみてはいかがでしょう」
「は……?」
「実は私さいきん家族を喪っており、ついでに親戚もいないわけですが、このままでは一人暮らし。高校生なのだからそれもまぁいいだろうとは思いますが、私は生活力を育てるのを疎かにして、米すら炊けません。そこにちょうど加賀美家が舞い込んできました。運命とすら言えてしまう」
「い、言えないだろ……」
言えるよ、と彼。
言えないだろ、と優心。
「どうです。かなりいい案だと思いますが」
「け、けど……この子は……」
「学生なんて傷つけ傷つけられ、です。私はもうそこにはいない。私は彼の事を大事にしたいと思う。友になりたいと思った。私には人が分からない。だから人の全体を愛することはできない。けれど、隣にいる誰かを思いやることはできる。それに怪我は治る」
命に触れない限り、彼が本当に怒ることはない。
「俺を許すのかよ」
「許すとか許さないとかじゃない」
「じゃあなんだよ」
「分解して解析して理解して順応できない感情が本音だ」
「意味分かんねぇよ」
「そうか」
根本的に性格が合わない。
考え方の根本が違う。
他者に傷つけられたのだから傷つけてもいいというのが優心だったが、彼はまるきりそんな事はない。
友人なんかになれるわけがない。
なれるわけがない。




