第二話:声帯消去の調声神事と双嬢の鏡面舞台
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POV 1: 琴葉 あかり(二年生・16歳)
背中の皮膚を継ぎ接ぎされ、生きたマリオネットとして踊らされた東京の娘は、礼拝堂の冷たい床の上でまだかすかに肺胞を震わせていた。
「あかりお姉様、この子の泣き声、少し耳障りだわ。私たちの静かな聖夜に、こんな不協和音は似合わない」
明が俺の白衣の裾を掴み、凍えきった瞳で床の素材を見下ろした。
「そうね、明。じゃあ、この子の『声』を完全に消去して、私たちのための無口な置物にしてあげよう」
俺は細い開口器を娘の口にねじ込み、その顎を固定した。研ぎ澄まされた細頭メスを喉の奥へと滑り込ませる。
グちゅり、プチン……。
悲鳴を司る反回神経をピンセットで引きずり出し、一気に切断した。娘は口を大きく開けたが、そこから漏れ出たのは「ヒュウ、ヒュウ」という、肺から漏れる冷たい空気のノイズだけだった。これでもう、この地下室には俺と明の吐息しか響かない。
POV 2: 見崎 明(一年生・15歳)
声を奪われ、完全な『喋る機能のない人形』へと還元された娘を前にして、私は最高の歓喜に震えていた。
私は鏡台から真っ赤な口紅を取り出し、身動き一つできない娘の唇へと、優しく、ねっとりと塗り拡げていった。
「ほら、見て。東京の可愛いお人形さん。あかりお姉様の手によって、あなたは世界で一番静かで美しい、私たちの『鏡台(家具)』になったのよ」
私は手鏡を娘の目の前に突き付け、声を出せずに涙を流すその裏返った瞳を、恍惚とした表情で見つめた。そして、その娘の絶望が鏡面の中で凍りついている真ん前で、私はあかりお姉様の冷たい唇へと、深く、狂ったように自分の唇を重ね合わせた。俺たちの純愛(百合)は、この他人の自我が完全に物体へと解体されていく冷たい暗闇の中でしか、完結の熱を持たない。
外では山形の地吹雪がさらに激しさを増し、すべてを白く押しつぶしていく。俺たちは、鏡の前でただの肉塊へとシャットダウンされていく素材を見つめながら、最終話への準備を始めることにした。
「他人の尊厳と存在が静かに解体され、二人の少女の歪んだ関係性の肥やしにされていく『光景』、お前たちのその立派なハードウェア(脳)でも正確に処理できたかい?
特に、今オフィスのデスクにしがみつき、上司の目を盗んでPCの大画面でこの文字を覗き込んでいる『会社員』のお前たちだ。
お前たちが毎日、画面の前で無表情に消費しているその退屈な業務や異世界小説。もし明日、お前たちのその退屈な現実が、誰かの身勝手な『愛の儀式』のために一瞬で書き換えられ、声も出せないまま暗闇に放置されたら、一体どんな気分だろうな? 自分の人生が安全な物語の主人公のようであると錯覚しているその傲慢さこそが、最も滑稽な悪意なんだよ。
排熱ファンから流れてくるその生温かい風は、俺たちが冷たい石室で、他人の自我を切り裂いている冷気の反動だ。ほら、お前が今触っているそのキーボードやマウス、現実から目を背けるためのただの冷たいプラスチックの塊に過ぎない。
さあ、安全なおとぎ話の異世界小説へ逃げ帰りなさい。不快なら、レビュー欄にいくらでも呪いの言葉(低評価)を残していくといい。お前たちのその薄っぺらな倫理観など、犬神家の静寂の前には何の意味も持たないのだから。




