神と信徒の交流
残酷な表現がございますのでお覚悟お願い致します。
また予告無くGW休みをいただき申し訳ありませんでした。
「ぎんりゅー、おーい」
呼んでも銀流には聞こえていのかひたすらにエルフの街並みを破壊している。む、そういえば銀流尻尾が九本ある。あれでも振り返るとそこには二尾が居る。
銀流の尻尾9通り越して10になった!?めでたいけど祝う空気じゃない。
「やめ…やめてくれ…」
王エルフや部屋にいたエルフが泣き出す。しかし彼らの泣き声は銀流には届かない。
その時だった。部屋に空いた大穴から巨大な竜が覗き込んできた。
『神よ……どうしたその姿は』
「ちょっと彼らにやられてね」
真っ赤な鱗の竜は頭上の鱗の一部が赤と白だった。恐らくこの個体は私の祝福を受けた個体だ。多分鱗人だろう。そんなことを考えているといつの間にか獣人、虫人、小人族、妖精、植物妖精の管理者達が集まっていた。
まあ、神が暴れているのだから管理者としては見逃せないよねえ。
眼前では銀流が相変わらず暴れている。この分では生存者は絶望的だろう。いやでもエルフは細々とした集落をいくつか作っていたはずだから滅亡にはならないかな?でも、また数を増やすのは大変そうだ。
「マァシロ様…!我等の罪は重々承知しております。ですが罪無き子も巻き込まれております。どうか、どうかグンリュー様を止めてはいただけないでしょうか…!」
銀流いつ落ち着くかなーと見ていると、美味しい人が床に頭を擦り付けて懇願してきた。と、言われてもなあ。
「……個々の罪など、感情も混ざれば判別など不可能。故に我らは管理者を与えたはず。これはその管理者が選んだ行動だけども?」
みんなが見てるからちょっと威厳っぽい風に喋り、床に倒れて泣いているエルフの管理者を見る。
ハクハクと何かを言いたげなので口元の麻痺だけは解いてやる。
「神が人を救わないから!我らは人を救おうとしただけだ!全てを救わぬ神などいらない!それの何が悪い!」
「……口で言う前に手を出すのがエルフの流儀か。それに我々が人を守るわけが無かろう。人には人の神がいるゆえな。我らはそなたらを保護する神だ」
そう言い切るとエルフ王は愕然とした。
人の担当はアレイトだ。と言っても彼は今必死に人を減らそうとしているので守ったりしないだろうけど。
『神がいらねーのは自由だけどよう、お前なんで我等の神に攻撃をした』
「…結界を、無くそうと…」
『はぁ!?結界を無くせばあのうじゃうじゃ居る奴らが攻めてきて、こんな森なんて速攻で食い尽くされるぞ!何考えてるんだよ!』
「せっかく与えられた我等の安住の地を消そうとしたのか…!」
「……我らとて故郷は懐かしく、人の居るあの地へ帰りたい気持ちはあります。けれど今帰れば枝の一本まで食い尽くされるのが落ち。我等が個々の力をつけるか人が減るまで結界は無くてはならない物だとなぜ分からないのですか」
いつの間にか管理者達がエルフ王の糾弾を始めた。
エルフは人の姿に近いため受け入れられたようだが、ほかの種族は……興味本位で結界外に出て殺された者が多いそうだ。
彼等の怒りを聞いて、今更ショックを受けてもやったことはもう、戻らない。
でもまあとりあえず。
痛い。
「ぎんりゅー、そろそろ痛みで倒れそうなんだけど治しても良いー?」
止めたい訳じゃないけれど、怪我を治して良いのかの判断がつかず銀流を呼ぶ。すると今まで暴れまくっていた銀流の動きがとまり…ゆっくりこちらを向いた。
瞬間、人の姿になった銀流が飛んできた。
「なんで治療をしないんだ!!」
「いやだって証拠として怪我を見せないといけないかなと」
「証拠なんていらないだろう!?我らは神だぞ!?早く治せ…良い!俺が治す!」
フーフー!と怒り露な銀流の神気が身体中を満たすと、あっという間に傷は治っていった。ちぎれた羽も、ふわもこな服も元通りだ。
「羽、消せ」
「え?ああ、うん」
銀流の性格変わったんじゃないかな。そう思いつつも羽をふっと消すと即座に捕獲された。そして私を抱いたままエルフ王の元へ行く。
怒気を放つ銀流に他の種族はサッと退いて、頭を下げた。
「エルフは全て死ね」
片手に私を抱いたまま、反対の手をエルフ王にかざしたそのとき。
「まってーまってよぎんりゅー!」
間の抜けた声でアレイトが現れた。
「やあ!久しぶりだね銀流に真白」
そして空気を読まずニコッとサムズアップを決めた。
「何の用だ」
「いやいや、どうせ殺すならさ、こいつら俺にちょうだいよ。人間虐殺マシーンとして再利用するからさー」
えへへーとアレイトは笑うけれど、その話の内容はだいぶ物騒だった。と言うか人を守りたくって神に刃向かったエルフに人の虐殺をさせるって……それは酷いんじゃないだろうか。
「人を守りたかったこいつらには一番いいお仕置でしょ?銀流は良い復讐が出来て俺は人の数を減らせて万々歳!どうよ?」
「えげつないと思う」
「わざわざ面倒なまねしないでサクッとやればいいだろ」
「えー、だって神力で大量虐殺すると冥府の神に怒られちゃうんだもん。俺もう三回それやって次は自分で処理させるって脅されてるからさあ」
三回やった…それって完璧に管理の才能が無いのでは…とは言え、私もまだそこまで数が増えてないからその辺上手くできるのか分からない。
けれどそうか、本来は神力でさくっとやるのはダメなのか。
初っ端にやっちゃったけれど。やる前に教えて欲しかった。
「という訳で、生き残りエルフはちょうだい?」
「好きにし「ダメ」」
アレイトのおねだりに二つ返事をしようとした銀流に割り込むと、二柱はキョトンとこっちを見た。何を考えているのか分からないけれど絶望していたエルフの管理者は目を輝かせてーーーー
「この子は渡さない」
なんか勝手に絶望した。
銀流の手から逃れて、美味しいエルフの服を掴む。
わざわざ守るくらいには気に入っているのだ。これは簡単には渡せない。
「マァシロ様!私だけでなく、他のエルフもお願い致します!」
「……えー…」
美味しい人だけで良いのだけれど。ああ、でも繁殖用に数体は居ても…でも痛いのは嫌だしなあ。うーんと考えて困って助けを求めるように銀流を見る。
すると銀流はふっと笑った。
「ならば信仰心の強い者は世界樹の守り人として私たちが。弱い者はアレイトに引き渡しましょう。エルフの神官よ、それが妥協点だ」
ああ、そういえば最近は不信神者が増えてきてるって言っていたっけ。
渋々と頷くエルフの神官と、絶望するエルフの管理者。
管理者は当然ながら私の祝福を剥奪し、半数に昇った不信神者の生き残りと共にアレイトに引き渡される。
アレイトにより人への殺意と、そう簡単に死ねない呪いと、力を植え付けられたエルフ達はその後外の世界で人間と戦い続ける『ダークエルフ』として生きていくことになる。
一方で結界内に残ることを許されたエルフは、美味しい神官を頂点として世界樹守り人の任を与えられ。
突出した能力の持ち主は『ハイエルフ』となり生きていくことになる。
大量の死亡者と、二つの生きる道。それを以ってエルフは神殺しの罪を償うこととなった。
いや私殺されてないけどね。




