第十六話 今度こそ
「……さん?……兄さん!兄さんってば!」
は、と林太郎の意識が覚醒する。目の前には―
「総司…………?」
林太郎はどくどくと心臓の音が大きくなるのを感じた。
総司は死んだ。
俺も死んだはずだった。
なのに、どうして――
「やっと気づいた。どうしたの?兄さん。なんだか抜け殻みたいに……えっ何、なんで泣いてるの」
総司は林太郎の顔を見てぎょっとした。
林太郎の頬を一筋の涙が伝っていた。
―― 総司が生きている。
先程まで見ていた、あのやせ細った姿はどこにもない。
目の前にいるのは、病など知らぬように笑う、懐かしい総司だった。
林太郎は思わず総司の両肩を掴んだ。そこには確かな体温があった。
「総司……本当に総司なのか……?」
「え?ちょっと本当にどうしたの兄さん。大丈夫?頭でも打った?」
総司は変なものを見たかのような目で林太郎を見ていた。
「まだ寝惚けてんじゃねえのかそいつ」
土方が欠伸をしながら林太郎を横目で見た。
そのぶっきらぼうな物言いに、林太郎は思わず喉の奥が詰まる。
土方も、生きている――
「まあまあトシ、そう言うなって…。
大丈夫か、林太郎」
林太郎にとっては、ひどく懐かしい声だった。
「……近藤先生」
林太郎が迷わず振り返ると、心配そうに林太郎の顔を見つめる近藤がいた。
「おう。どうした林太郎」
近藤は何気なく笑って返事をした。
――あの頃の近藤だった。
まだ何も失われていない。
試衛館の仲間たちに囲まれ、皆に慕われていた頃の近藤勇。
板橋の露と消えることも知らず、ただ剣の道を信じていた男だった。
林太郎は胸の奥が締め付けられるのを感じた。
「……それで、本当なのか。お前は江戸へ戻ると言うのは」
近藤の言葉に、林太郎はゆっくりと顔を上げた。
「いえ」
「俺も一緒に京へ行きます」




