規格外なお嬢様
大変お待たせいたしました。
私は彼の微笑みを見た途端、ゾワッと体が身震いして危険信号を鳴らしている。
こういう場合は直ちに離れるにこしたことはないのだが、フッと思った。
ーーいつからこの人はこんな笑顔を人に見せるようになったのだろう。
私にぶつかった男の人の名前は、夜神零律。
大病院跡取り且つ最近人気絶頂のクール系モデル。
そんな彼、夜神零律を昔見たことのある私が思ったことは、昔の彼の面影は綺麗さっぱりと無くなっていたということだった。
昔、少しの擦り傷で入院騒ぎになった時、入院中の子供達にブツブツ言いながら遊んであげてた根が優しい男の子。
それが私が最初に見た彼の印象だった。
子供達が怪我をしたら、直ぐに何処から隠し持っていたのかウサギさん柄の絆創膏を消毒して貼っていた…という記憶があった気がする。
プッ…意外と可愛い趣味の人。
「何を笑っている」
あらあら、ついつい頬が緩んでしまっていたみたい。
彼に目線を向けると眉間には電光を走らせ瑠璃色の瞳が不快感を滲ませていた。
それを見て、そこまで嫌か!と思ったが、ウサギさん柄の絆創膏を思い出しフフッと笑みを溢した。
「昔の貴方を思い出しただけよ」
彼は素っ頓狂な顔をして首を少し傾げた。
まぁ、当たり前だろう。彼から見たら私なんて見たことない女なのだからね。昔だって、私が窓から見ただけだし。
と、そんなことを思っていると彼が私を素通りしてどこかへ行ってしまった。
まぁ、リビングはまた今度行けばいっか。
今は適当に外食を済ますことにした私は、ただただエレベーターで1階へと向かった。
階段で行くと疲れるし、迷うからだ。
そんなこと分かってるなら最初からエレベーターを使えと思うかもしれないが、好奇心が買ってしまったのだ。仕方が無いこととスルーして欲しい。
チンッと1階についたと知らせる音が鳴り、ゆっくりと扉が開かれる。
そのまま私は、鍵を受付に渡し、近くにあるCLUBに足を運んだ。
日本は遊べるところが少ない。それに大人しいお嬢様が多くて、CLUBくらい行かないと暇で暇で仕方が無いからだ。
CLUBに入るとトイレに行き、ロングコートを脱ぎ捨てて黒髪の地味な顔でも合うように、黒と白を基調とした肩だしのワンピースを曝け出し、赤い口紅を塗って、財布だけを手に持ちCLUBの中心へ入って行った。
カラコンは目が乾いたので取ることにした。
鏡を見てみれば、学校に通う南雲友希とは到底思えなく、自分でも化けるな。と苦笑した。
自分で言うのもなんだが、髪を黒く染めているせいで黒髪に碧眼と言う容姿は、このCLUBにいる人みんなが目を引いたと思う。
実際、声もたくさん掛けられちゃった。
「おねぇさん!1人?俺達と遊ばない?」
「綺麗な目をしてるよね」
「遊ぼうよ」
次々と男が寄って来るが、私は男と遊ぶためにCLUBに来たんじゃないっての!
「ごめんなさい、拒否します。」
ニッコリと微笑み、バカな男達が分からないよう英語で断った。
男達は英語の意味が分からないようで慌ててどこかへ行く。
そんな男達にほくそ笑んでいると、誰かに肩がぶつかる。
私は咄嗟に謝るが、返事がない。
振り向くと、なんと夜神零律…彼がいた。
バレる、バレてしまう…その探るような目をやめて欲しい!
彼は私とぶつかった肩を手で叩き、ひと睨みすると何事も無かったかのように人混みの中へ消えた。
や、まぁすぐに分かるんですけど。
だって、彼って目立つし女達が寄って来てるから居場所なんて簡単に分かる。
私は彼が女達に捕まっていることを良いことに、素早く寮へと戻ることにした。
寮の門へと近付くと、門の上に誰かが座っている。
白銀の髪が月光に当てられ、キラキラと輝いて見え、黄緑の瞳は私を捉えた。
「あ、やっと帰ってきた」
「ーーーーレオ」
レオは門の上から地面へ飛び降りると、ひきを作る様に目を細め口端を吊り上げた表情を私に見せる。
「待ってたよ、シェルティ嬢。」
目が笑ってない笑みで本当の名前を言われ、ビクッと肩が震えてしまう。
「どうして…」
「なんでって、直ぐに分かるよ。スノーチェ・シェルティ嬢」
ゴクリと喉を鳴らす、張り詰めた緊迫感が寮の前で起こった。
それをぶち壊したのは、なんとレオ。
「なーんてね。別にバラそうとか思ってないし、一回こんなシーンやってみたかったんだよね」
スケボーを肩に乗っけて、寮の中へ入ろうと私に振り向き際に舌を出したレオの姿を見て、ホッと胸を撫で下ろす。
「鍵は?」
受付でレオに右手を出され、ポケットから鍵を取り出し渡す。
「お話は、そーだな…僕の部屋でしようか」
鍵を口元に持って行き無邪気な笑みを私に向けるレオ。
なんの話しをされるのだろうか、緊張と不安がエレベーターが上がるにつれて募っていった。
「早く入ったら?シェルティ嬢」
「お邪魔します…」
レオの部屋の中に入ると黒が貴重で男の子!って感じだった。
キッチンの方はなんだか、プロの職場のようにいろんな種類の材料が置いてあったり、包丁の種類も多種多様に吊り下がっている。
「こっちに座りなよ」
包丁に触れようとした手を引っ込めてレオに向き直ると、レオがその場所を叩いて座れと言った場所は、ベッドの上でした。




