寮では
私は寮を使っての学園生活をしている。いや、することになった。
だって直ぐ近くに家を買ってもいいけど、そんなことをしたらバレてしまう可能性があるでしょ?
だから私の別邸よりも小さい寮に住むことにしたの。
今日出会った桜さんは家から通っているため私は1人だ。この寮を機に友達を増やそうとも考えている。
ラスベガスで遊んで過ごしていたため、友達は数える程しかいないのだ。
自分の部屋に入ると、白を基調とした壁と床が広がっており、趣味の良いシャンデリアと絵画がかけてあった。テーブルは私の好きな猫足にして貰い、寝室には大きな紙が壁に貼っていた。
①何か御用がありましたらインターホンを鳴らし、係りの者を呼んで下さい。
②食事は仰って下されば、何でも作ります。部屋で取るも良し、リビングで取るも良しです。リビングで取る場合は近くに住んでいる方々もいます。
③入浴の際には部屋のお風呂をお使い頂くか、外の露天風呂を使用されるか、中の大浴場を使用して下さい。
尚、お風呂は季節によって柚子風呂になったりと変わりますので、アレルギーなどがあれば仰って下さい。
④すべて使用人に任せて下さい。
紙が貼ってある壁の近くにインターホンもあった。
「やっぱり寮だからメイドや執事はいないのね。この学園はプライバシーを重視する所みたい。私の他に誰々住んでいるのかしら」
んー、と悩んで思い付いた私は制服を脱ぎ捨てて私服に着替え、広い寮を散歩がてら歩くことにした。
ついでに同じ住人のリサーチもすることにする。
ここで、注意することが1つ。
オートロック制なので、外の廊下に出る際は必ず鍵を持って出ないといけない。
鍵の番号は704、部屋と同じ番号だ。
忘れた場合は大事になるため、避けたいところだ。
「さぁて、探索探索~」
鍵をポケットに入れ足取りを軽くしながら部屋を出た。
言い忘れていたが私がいる場所は7階。故に部屋も7階だ。
なので、取り敢えず下に行くことにした。リビングがどのようなものなのかも見たいしね。
階段を降りようとした矢先、目の前に綺麗な男の子が窓辺に座って此方を見ていた。
手の項には稲妻のマークが荒々しく刻まれ、また同じ稲妻のマークが刻まれたスケボーを持っている。
「なに、」
凛…と聞こえる声音は少し高く、きちんと男の子の声だった。
声に見惚れていたのか、美しい顔に見惚れていたのか…大きな騒音が響くまで動けなかった。
バラバラバラバラバラバラッ!!!!
綺麗な男の子が背凭れにしている窓を挟んだ後ろにヘリコプターが近付き、窓にピシッと亀裂が入る。
『レオ様ーーーー!!!やはり寮生活なんて辞めて下さいーーー!!!』
難しく考えなくてもヘリコプターに付いているスピーカーから声が聞こえた。
「you -- noisy」
溜息と共にフッと出た言葉を男の子が発した直後、その男の子がグイッと私の腕を引っ張り胸に抱いて階段をスケボーで滑り落ちて行く。
「ごめんね、怪我するといけないから」
私は男の子が目で示す先を見つめると、ヘリコプターの風圧に負けた窓ガラスが木っ端微塵に私が元居た所にまで飛び散っていた。
「ううん、すっごく楽しい!」
もし、あの時その場で取り残されていたら擦り傷では済まなかっただろう。
初めて会った男の人なのに抱き寄せられて、不安定なスケボーで階段を滑り落ちていると言うのに、何故か怖くなくて、それよりも楽しさが勝った。
風を切る様な滑らかな滑りで、時々男の人は口角をニッとあげて態と宙を飛び跳ねたりしてくれた。
最後は7段ぐらい上から飛んで、見事に着地して私は床に下ろされた。
「楽しんで貰えて良かった」
ニッコリと私よりも少し背の低い男の子は笑って右手を差し出して来た。
「あくしゅっ」
「レオ、よろしくね」
笑顔に吊られて私も笑顔で差し出された手を握った。
可愛いレオの行動に少し熱を持った手だったかもしれない。
「レオ様ーーー!!!」
「げっ、」
私とレオが握手をしていると、ヘリコプターのスピーカーから聞こえた声と同じ人が玄関のホールから大声で叫んでいた。
その姿をレオは見るなり私に鍵を渡して、スケボーに乗って何処かに行ってしまった。
鍵の番号は708で私の部屋の近くだ。
仕方ないので、晩御飯を食べたら届けることにする。
と、いう訳でリビングに足を動かした。
「……ここ何処なの?」
おかしい…確か、あの角を右に曲がるんじゃ無かったっけ?
あ!左だったのか!じゃあ、またさっきの場所に戻って…
「あれ………?」
今度は見られない場所に来た。
目の前には305と書かれたドアが1つ。
はて、いつの間に3階に来ちゃったんだろ…
そう考え事をしながらドアの前で腕を組み、頭を捻っていると
ガチャッと、その305のドアが開き、私の後頭部に良い音を響かせた。
「おぉぉおぉおおおぉおぉおぉおおぉおお…」
あまりの痛さに頭を抱えて長い雄叫びを発してしまった。
だが、そんな私に憐憫の言葉をかけることも無く、冷淡な言葉をかけられた。
「邪魔だ」
だ、そうです。
膝を抱えて後頭部の痛みを抑えている私に対して、上から降ってきた言動。
『邪魔だ』これは、私の後頭部よりも痛く割れたガラスのハートが木っ端微塵になっちゃったよ。
酷い言いようだな、と顔を拝んでおこうと思い上を見上げると、ドクンッと心臓が跳ねた。
鮮やかな瑠璃色の髪が白い肌に映え、眼鏡の奥に隠された深い瑠璃色は私を見透かすようで、私は咄嗟に目線を外した。
「はぁー…何時になれば、そこを退くんだ」
短い溜息と共に眼鏡のブリッジを中指で押し上げる仕草をする。
私はその仕草に少し見惚れて、慌ててその場を退いた。
「っあ!」
何か思い至った私は男の人が着ているシャツをギュッと掴み、行く手を遮る。
男の人はクンッと体勢が後ろに行き、私を睨む薄暗い不快感の影を宿した深い瑠璃色の瞳が私を映した。
「リビングに連れて行って貰ってもよろしいかしら?」
悪魔でにっこりと微笑んだ。
私では無く、彼がーーーーーー。
ブリッジとは眼鏡の鼻にかかる部分です。
冷たい印象のある人が笑うと背筋がゾッとしますよね。
私的にはレオ君が気に入っています。
冷たい人を書くのは苦手です(^^;;合ってるかな…?
悪魔で、ユキの言葉遣いはお嬢様です!




