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中庭はどんより薄暗く、今にも雪が降り出しそうだった。
冷風が頬に当たり、ぴりと痛みが走る。
雪花が中庭にたどり着いた時には帝を始め妃たちや役人、今から始まる詮議に恐怖を感じつつ興味を持った雰囲気の女官たちで溢れかえっていた。
多くの注目が集まる中、雪花は帝の前に敷かれた粗末な御座に座すように指示される。
「ただ今より公開詮議を始める」
重々しい側仕えの声が轟く。周囲の人々は唾を飲み込み、中央をただ見つめていた。
「雪花よ。なぜ詮議が開かれているか分かっておるか?」
帝が口を開く。
周囲の人全てが敵に見えた。ここには雪花を守ってくれる琴乃も春陽もいない。視界の端に見える日乃子は扇子で顔を隠しているため何を思っているか分からなかった。
今までだって白い目を向けられてきた。愛想がないと散々言われ、孤独には慣れていたはずなのに。
この場がとても怖い。
不安が湧き上がる。
雪花は声を震わせながら答えた。
「いいえ。分かっておりません…… この詮議の理由も、わたくしが何者なのかも」
「ふっ。何も分からずによく今までのうのうと暮らしてきおって。それなら教えてやろう」
ざわざわと木の葉が擦れる音がこだまする。雪花は帝を見つめたまま唾を飲み込んだ。
「お前は化け物、いや——妖だ」
「……っ!?」
雪花の目が大きく見開かれる。初めて聞く真実に胸の奥が凍りついた。
ずっと恐れていた。
自分は人とは違うのではないか。
この力を持つ自分は、誰かにとって化け物なのではないか。
その答えを、今、目の前の帝に突きつけられた気がした。
「どういうこと?」
「妖って?」
詮議を傍聴していた人々のざわめきがどこか遠く、他人事のように感じた。
(わたくしは、妖……なの?)
ぐるぐるとたった今並べられた事実が頭を埋め尽くす。
「まず前提に、広く知られていないが、この国には妖が混在していきておる。私は妖が嫌いだ。人間ならざる力を持つ奴らが。だから密かに滅してきたのだ。それなのにこんな身近にいたとは」
「滅してきた……」
「気味の悪い力を持ちながら人間に紛れて平然と生きている奴らは、この国を不幸にさせる。だから見つけ次第抹殺しているのだ」
「……で、ですが、わたくしをはじめ妖の方は何か悪いことをしたのでしょうか?」
雪花はびくびくと言葉を放った。悪いことをしていないのに妖という理由だけで殺められるのはおかしい。
「……お前がそばにいるだけで空気が凍っているように冷たくなる」
「そ、そんな、それだけで……」
「それだけ、だと?」
帝の眉が吊り上がった。帝は妖に対して嫌悪感を抱
いていることがひしひしと空気で伝わる。
「先日のお前の放つ力を見て思い出した。私は昔、お前とよく似た妖を手にかけたことがあったとな」
帝の厳かな声のみが響く。広い中庭はざわめきが止み、皆帝の言葉に耳を傾けていた。
「八年ほど前に、北の山に暮らす化け物を見つけ、消すように指示したことがあったな」
「八年前……北の山……」
聞き捨てならない言葉に雪花は目を見開いた。
「若い夫婦に一人の子ども。男は人間だが、女はそう――雪女だった。化け物だけを殺すつもりが、男が庇ってそいつも殺しちまった。そして仕向けた兵は全滅。その雪女に氷漬けにされていた」
音が何も聞こえない。息を吸っているはずなのに上手く吸えず苦しい。
呼吸が大きく乱れ始め、生理的な涙が出た。
(……お父さまと、お母さまを殺めたのは……主上さま……)
雪花の脳裏にかつての記憶が蘇った。




