↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜鳴き蕎麦徒然草子  作者: いわん
第九部:文化十二年、江戸日本橋。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
87/100

第八十七回:鍼治療、再び。

文化十二年。秋は霜月の初め。江戸は日本橋。

橋の袂に、一台の「夜鳴き蕎麦屋」に灯りが付いていた。

提灯に書かれている屋号は「清吉」。暖簾には「二八」と書いてあった。

しかし、その日の夜、「清吉」の提灯の明かりはなかった。


その日の昼。「清吉」の店主が蕎麦を打っている時。

店主は再び、腰に違和感を覚えた。

――こりゃ、また、腰をやっちまったか?

その日訪れた若者に「今日は休みだ」と告げた。

無理をしたら悪化する。以前、鍼医に言われたことだった。

横になって休む。それでも違和感は治らない。

店主は、同じ裏長屋の鍼医の元へ向かった。

「鍼医の旦那……いますかい……」

店主は戸を叩いた。

「……開いてるよ。お入んなさい」

店主は鍼医の部屋へ入って行った。

「……ほう。また腰かい」

鍼医は手も触れずに診断した。

「……なんでお分かりに……」

「足音だよ。昨日と違って、腰を庇うような足運びさね」

「……お見それしやした……」

店主は頭を下げた。

「ほら。突っ立ってないで、上がって横になりな。また鍼を打つよ」

鍼医はそう言うのだった。


鍼医は、店主の腰を触診する。

「……偉いねぇ。『びっくり腰』にはなってないよ。もうちょっと無理してたら再発してたかも」

「……あんな痛みはもう勘弁ですよ……」

「この状態なら、鍼も十分に効くだろう。でも、今日一日は安静だ」

「……わかりやした……」

鍼医は、店主の腰に鍼を打つのだった。


「お代はいくらで……」

おずおずと店主は聞いた。

「お代はいらないよ。もう、あんたから貰ってる蕎麦の方が、鍼の代金よりも多いからね」

そう言って、鍼医は笑った。

「……すいません。腰がこんな調子なんで、今日の蕎麦は……」

「わかっとる、わかっとる。腰が楽になってからで構わんよ。それよりも養生せい」

鍼医は再び笑うのだった。


霜月の風が吹き、裏長屋に置いてある屋台の風鈴がチリリンと鳴った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。