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夜鳴き蕎麦徒然草子  作者: いわん
第七部:文化十年、江戸日本橋。

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第六十九回:たまの休日。

江戸は日本橋。冬。

橋の袂に、一台の「夜鳴き蕎麦屋」があった。

提灯に書かれている屋号は「清吉」。暖簾には「二八」と書いてあった。

しかし、その夜、いつもの場所に「清吉」の提灯はなかった。


その日の夜。

「清吉」の店主は、両国広小路の居酒屋にいた。

店主の顔はほころんでいた。

「いらっしゃい。何にしましょう」

その言葉に、店主は答えた。

「酒を二合と……今日のおすすめはなんだい?」

「田楽か、煮込みですかね」

「じゃあ、田楽。頼むよ」

店主は注文を終えた。

懐をまさぐる。

そこには、今日買った冊子が一冊入っていた。

ようやく手に入れた一冊だった。

「それが今、懐にある」というだけで、店主の顔は緩むのだった。

「はいよ。酒二合と田楽、お待ち」

店主の前に酒とつまみが運ばれてきた。

店主は酒をお猪口に注ぐ。

燗酒を店主は一気にあおった。

続いて、田楽を一口。

店主の顔に笑みが溢れた。


田楽を食べ終えた。だが、まだ酒は半分残っていた。

「煮込み、追加で頼むよ」

店主は上機嫌でつまみを頼むのだった。


夜も更けた頃。

居酒屋は閉店時刻を迎えた。

「いい酒だったよ。ご馳走さん」

店主は軽い千鳥足で、帰路につくのだった。


江戸の冬風に吹かれて、居酒屋の暖簾がたなびいた。


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