18.11 ジャンヌはゴリアテを倒した羊飼いダビデなのか
シャルル王の戴冠式の後、パルヴィ通りで群衆に押されながら、想像力豊かなある書記官がノートルダム大聖堂の輝かしいファサード(正面玄関)に目を向けた様子を想像してみよう。
(⚠️書記官(Clerk):書記官に限らず、事務員、聖職者、商店の売り子など肉体労働ではない文系職業に就いている人全般)
年代記(歴史)を知らず、自分の人生のみで時間を測っていた当時の人にとって(補足:過去から連綿と続く歴史を知らない当時の一般人は、自分の人生が時間のすべて)、時に「石造りの聖書」といわれる大聖堂は相当古いものに見えただろう。
バラ窓の上部の尖ったアーチの左側には、鎧を着て誇らしげにそびえ立つ巨人ゴリアテの彫刻があり、アーチの右側には、よろめき、倒れそうな人間の姿が繰り返される。これらと同じ彫刻を、当時の書記官も確かに見ただろう。[1533]
そして、この書記官は、旧約聖書『列王記・第一』に書かれている話を思い出したに違いない。[1534]
(⚠️旧約聖書『列王記』について:現在の聖書では『サムエル記上下』と『列王記上下』に分割されているが、もともとは『列王記』第一・第二・第三・第四と呼ばれていた。古代ユダヤの歴史書で、イスラエル王の系譜が記されている)
*
「ペリシテ人の陣営から、
ガテ出身のゴリアテという名の
卑しい身分の男が出てきた。
男の背丈は6キュビットと1スパン
(約2.9メートル)だった。
(⚠️1キュビットは肘から中指の先端までの長さ。およそ43〜53センチ)
頭に青銅の兜をかぶり、鱗状の鎖かたびらを身につけていた。
青銅製の鎖かたびらの重さは5000シェケル(約57キロ)だった。
彼は立ち上がり、イスラエル軍に向かって叫んで呼びかけた。
『俺はイスラエル軍に恥辱を与える。
おまえたちの中から一人を選び、
下って来て一騎討ちをさせろ』
さて、ダビデは父の羊を放牧するためにベツレヘムに来ていた。
しかし、彼は朝早く起きると、羊の群れの世話を番人に任せて、
マガラの地へ行き、戦いに出ているイスラエル軍のもとへ来た。
ゴリアテを見て、ダビデはこう尋ねた。
『あの割礼を受けていないペリシテ人は何者か?
生ける神の軍隊に挑むとは』
ダビデがつぶやいた言葉はサウル王の耳に入り、王は彼を呼び寄せた。
ダビデはサウル王に言った。
『誰の心も、彼のことで落胆させてはならない。
あなたのしもべである私が行き、あのペリシテ人と戦おう』
するとサウル王はダビデに言った。
『おまえはあのペリシテ人に抗うことも戦うこともできない。
おまえはまだ少年だが、あいつは若い時から戦士なのだから』
ダビデは答えた。
『私が行って、あいつに抗う。イスラエルの恥辱を取り除く』
そこでサウル王はダビデに言った。
『行きなさい。主(神)があなたと共におられますように』
ダビデはいつも手に持っていた杖を取り、
川から滑らかな石を5個選ぶと、
投石器を手に取り、
ペリシテ人に向かって進み出た。
ペリシテ人はダビデを見て、軽蔑した。
ダビデは若く、血色がよく、美しい顔立ちをしていたからだ。
ペリシテ人はダビデに言った。
『おまえが杖を頼りにして俺に挑むとは、
俺は犬なのか?』
ダビデはペリシテ人に言った。
『おまえは剣と槍と盾を頼りに、私に立ち向かう。
だが私は、おまえが挑んだ万軍の主、
イスラエル軍の神の名を頼りに、おまえに立ち向かう。
今日、主(神)はおまえを私の手に引き渡すだろう。
主(神)は、剣と槍で救うのではないと
全世界に知らしめるためだ。
これは主(神)の戦いであり、
主(神)はおまえたちを私たちの手に引き渡すだろう』
ペリシテ人が立ち上がり、
接近して、ダビデに対峙しようとしたとき、
ダビデは急いで戦いに駆けつけ、
ペリシテ人に走って立ち向かった。
ダビデは袋に手を入れて石を取り出し、
投石器に投げつけ、それを振り回して
ペリシテ人の額に当てた。
石は彼の額に突き刺さり、
彼はうつ伏せで地面に倒れた」[1535]
*
さて、戴冠式を見物している書記官は、大聖堂の彫刻を見て聖書のこれらの言葉を思い出しながら、こんなことを考えただろう。
イスラエルを救い、羊飼いの少年の投石器でゴリアテを倒した不変の神が、「最もキリスト教的な王国(フランス王国の別名)」を救済し、ヒョウの王国に恥辱を与えるために、いかにして農民の娘を立ち上がらせたかを。[1536]




