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教皇庁に禁書指定されたジャンヌ・ダルク伝  作者: しんの(C.Clarté)
上巻・第十八章 シャロンとランス降伏/戴冠式

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189/199

18.11 ジャンヌはゴリアテを倒した羊飼いダビデなのか

 シャルル王の戴冠式の後、パルヴィ通りで群衆に押されながら、想像力豊かなある書記官がノートルダム大聖堂の輝かしいファサード(正面玄関)に目を向けた様子を想像してみよう。


(⚠️書記官(Clerk):書記官に限らず、事務員、聖職者、商店の売り子など肉体労働ではない文系職業に就いている人全般)



 年代記(歴史)を知らず、自分の人生のみで時間を測っていた当時の人にとって(補足:過去から連綿と続く歴史を知らない当時の一般人は、自分の人生が時間のすべて)、時に「石造りの聖書」といわれる大聖堂は相当古いものに見えただろう。


 バラ窓の上部の尖ったアーチの左側には、鎧を着て誇らしげにそびえ立つ巨人ゴリアテの彫刻があり、アーチの右側には、よろめき、倒れそうな人間の姿が繰り返される。これらと同じ彫刻を、当時の書記官も確かに見ただろう。[1533]


 そして、この書記官は、旧約聖書『列王記・第一』に書かれている話を思い出したに違いない。[1534]


(⚠️旧約聖書『列王記』について:現在の聖書では『サムエル記上下』と『列王記上下』に分割されているが、もともとは『列王記』第一・第二・第三・第四と呼ばれていた。古代ユダヤの歴史書で、イスラエル王の系譜が記されている)




「ペリシテ人の陣営から、

 ガテ出身のゴリアテという名の

 卑しい身分の男が出てきた。


 男の背丈は6キュビットと1スパン

 (約2.9メートル)だった。


(⚠️1キュビットは肘から中指の先端までの長さ。およそ43〜53センチ)


 頭に青銅の兜をかぶり、鱗状の鎖かたびらを身につけていた。

 青銅製の鎖かたびらの重さは5000シェケル(約57キロ)だった。

 彼は立ち上がり、イスラエル軍に向かって叫んで呼びかけた。


『俺はイスラエル軍に恥辱を与える。

 おまえたちの中から一人を選び、

 下って来て一騎討ちをさせろ』


 さて、ダビデは父の羊を放牧するためにベツレヘムに来ていた。

 しかし、彼は朝早く起きると、羊の群れの世話を番人に任せて、

 マガラの地へ行き、戦いに出ているイスラエル軍のもとへ来た。

 ゴリアテを見て、ダビデはこう尋ねた。


『あの割礼を受けていないペリシテ人は何者か?

 生ける神の軍隊に挑むとは』


 ダビデがつぶやいた言葉はサウル王の耳に入り、王は彼を呼び寄せた。

 ダビデはサウル王に言った。


『誰の心も、ゴリアテのことで落胆させてはならない。

 あなたのしもべである私が行き、あのペリシテ人と戦おう』


 するとサウル王はダビデに言った。


『おまえはあのペリシテ人に抗うことも戦うこともできない。

 おまえはまだ少年だが、あいつは若い時から戦士なのだから』


 ダビデは答えた。


『私が行って、あいつに抗う。イスラエルの恥辱を取り除く』


 そこでサウル王はダビデに言った。


『行きなさい。主(神)があなたと共におられますように』


 ダビデはいつも手に持っていた杖を取り、

 川から滑らかな石を5個選ぶと、

 投石器スリングを手に取り、

 ペリシテ人に向かって進み出た。


 ペリシテゴリアテはダビデを見て、軽蔑した。

 ダビデは若く、血色がよく、美しい顔立ちをしていたからだ。

 ペリシテ人はダビデに言った。


『おまえが杖を頼りにして俺に挑むとは、

 俺は犬なのか?』


 ダビデはペリシテ人に言った。


『おまえは剣と槍と盾を頼りに、私に立ち向かう。

 だが私は、おまえが挑んだ万軍の主、

 イスラエル軍の神の名を頼りに、おまえに立ち向かう。

 今日、主(神)はおまえを私の手に引き渡すだろう。

 主(神)は、剣と槍で救うのではないと

 全世界に知らしめるためだ。

 これは主(神)の戦いであり、

 主(神)はおまえたちを私たちの手に引き渡すだろう』


 ペリシテゴリアテが立ち上がり、

 接近して、ダビデに対峙しようとしたとき、

 ダビデは急いで戦いに駆けつけ、

 ペリシテ人に走って立ち向かった。

 ダビデは袋に手を入れて石を取り出し、

 投石器に投げつけ、それを振り回して

 ペリシテ人の額に当てた。

 石は彼の額に突き刺さり、

 彼はうつ伏せで地面に倒れた」[1535]



 さて、戴冠式を見物している書記官は、大聖堂の彫刻を見て聖書のこれらの言葉を思い出しながら、こんなことを考えただろう。


 イスラエルを救い、羊飼いの少年の投石器でゴリアテを倒した不変の神が、「最もキリスト教的な王国(フランス王国の別名)」を救済し、ヒョウの王国イングランドに恥辱を与えるために、いかにして農民の娘を立ち上がらせたかを。[1536]

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