第四話 少佐
兵士の殆どが銃身を下げた後、少佐は、俺の職員証を軍服のポケットへ突っ込んだ。
「ちょっ、それ俺の……」
「お前ら。今回の件は何もなかった。いいな。これ以上の追及は命令に背いたことになる」
「サー、イエッサー」
兵士たちは一斉に返事をする。その中で、曹長だけがこぶしから血がにじみ出るほど固く握りしめていた。
「ミスター天羽といったか?さっきは、うちの部下が無礼なことをしてすまなかった」
少佐は、深く頭を下げ、謝罪してきた。その顔には謝罪だけではない何かほかの感情があるように見えた。
「君の安全はこの私が保証する。少し、ついてきてほしい場所がある。来てくれないか?」
「情報部に行けば、お前はおそらく解剖される。だから、身分がいる」
冗談だと思いたかった。吐き気を催す。俺は、ロケットの構造計算ならできる。だが、腹を割られたことはない。
いや、一回あった。そのときは、検死官ではなく、医師にしてもらったが。
「どこにいくんです?」
これで、いきなり銃殺刑ですとか言われても困る。
最低限の保証は取っておかないと。
「私のセーフティーハウスだ。安心しろ、軍部からはまあ、遠い。捜査機関の息もしばらくはかからないだろう。」
少佐は、不敵な笑みを浮かべて、俺を更衣室へと案内してきた。
「ここで、一応軍服に着替えてくれ。あっ、あと階級は何がいい?少尉から大尉まで だ。少佐以上は俺のメンツが立たなくなる」
「一番給料高いのって……」
「もちろん大尉だ」
「じゃあ大尉で」
俺は、金の話になると目がなくなる。基本的に使う機会がないのでたまっていく一方だが。
「月給は、たしか三六〇ドル程度だったな」
「そんなものか」
少佐の顔には、あきらめの文字しか映っていなかった。
「大尉は高給取りだぞ」
「そうなんですか?」
「ああ、それも相当な」
「自分も年収七〇〇万くらいもらっていたので……」
少佐が額を抑えてため息をついた。
「通貨は?」
「あっ、円だ」
「で。何ドルなんだ?」
「わからないです」
少佐は、呆れたような顔をしていた。
「それと、私の名前を伝えるのを忘れていたな」
「私の名前は、マイケル・チェン」
マイケル、か。どうも聞きなれた名前だ。
「それと、これ」
マイケルは、見慣れない手帳を渡してきた。
「なんだ?この手帳」
「軍人手帳だ。東洋人の家系でな。妙に親族が多くてな。軍にも役所にもいる」
俺は、何者だ……。
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