第三話 憲兵隊
俺が招く前に、先人たちの方から来てくれたようだ。
バンッ。
木製のドアが荒々しく蹴り飛ばされる。硝煙の鼻を衝く匂いが部屋に充満する。
「なんだ!」
白衣を着た男が叫ぶ。おそらく、今、部屋に入ってきたMPと書かれた腕章をつけた男たちに対してだろう。
「アメリカ空軍憲兵隊だ!全員両手を上げろ!」
場の空気が一気に張り詰める。黒光りする小銃の銃口が額に突き付けられる。
ロケットが爆発するのは何回も見たことがあるが、自分が爆発物になるのは、初めてだった。
「お前、赤のスパイか?」
意味が分からない。俺はJAXAの職員だ。秘密保持教育なら、飽きるほど受けた。だけど、額に、押し付けられている銃口はまだ下がらない。
「違う。」
「なら、何者なんだ?」
「俺は、日本の機関で働いている。」
「警察予備隊か。防衛の奴らか。」
いかにも曹長ないかつい顔をした男が、詰め寄ってくる。
「いいや、違う。」
「もっと金のない組織だ。ほとんどの人間が遠く眺めてる星空に人類をぶっ飛ばす機関だ。日本政府直下の宇宙開発機関でもある。」
いかつい曹長の眉が不機嫌そうに上がる。
「聞いたことがない。元帥閣下の直轄機関か?それとも、旧軍のお遊びか?」
「なら、こいつを見ればいい。」
俺は乱暴に、ポケットの中に入っているJAXAの職員証を出した。
「Japan Aerospace Exploration Agencyか。面白い。ソ連の偽装機関だろう?少佐、こいつを独房へ。」
明らかに、知的なたたずまいをした男は、俺の職員証をなめるように見渡し、電球の光へかざす。
職員証の中にはICチップが入っているはずだ。光にかざしたら……、中の金属が透けて見える。
「模様が浮かんでいるな。それとこのプラスチックの滑らかさ。」
「ありえない……。」
知的なたたずまいをした士官の顔がどんどん青くなっていく。場の空気も、同時に凍り付いた。しかし、士官はそんなこと気にせずに、もう一度俺の職員証を光にかざした。
「今すぐ、AF……。いや、何でもない。」
馬鹿みたいな顔をしながら待っていた曹長もやっと、自分の上司がスパイ容疑で逮捕しようとした男の一つのカードに夢中になっていることに気づく
「少佐。まさか、特捜案件では……。」
「黙れ。」
少佐の一言で、曹長の提案は一蹴される。曹長の顔には明らかに青筋が浮かんでいた。
「お前、どこからだ?マサチューセッツの連中ですら、こんな精巧にプラスチックに金属片は埋め込めない。」
「それだけじゃない。Aerospaceという単語。空と宇宙をひと続きの領域として扱っている。そんな発想をこんなに露骨に……。」
突きつけられた小銃の銃口はまだ俺の額の前で黒光りしていた。
「信じたか?」
少佐は、俺と職員証を交互に見る。
「日本に空軍は存在するのか?」
「いや存在しない。航空自衛隊ならあるが。 」
「自衛のための軍か?意味が分からない。」
数年後、あんたらの上司が作らせるんだよ、そういいたい気分だ。
「総員、下ろせ。」
「少佐!まだ早いです。」
「私は下ろせと言った!こいつの身柄は、私が直に捜査機関へ引き渡す。」
カチャカチャと安全装置をかける音が部屋に響く。
一人の兵士が十字を切った。それにつられてほとんどの兵士が十字を切る。その中で、一人だけ、南無阿弥陀仏と唱える声が聞こえてき




