第79話『ボクっ子ヒロイン拾いました』
「お兄ちゃん……」
深夜、消灯時間も過ぎて病院中が寝静まった頃、僕の病室に可愛い妹が来室して来た。
そう、ボクっ子だ。
「起きていたんだ……ボクが来るの分かっていた?」
「見慣れない天井だと寂しくて寝られないのかと思って、可愛い妹が来るのを待っていたんだよ」
「お兄ちゃんってば、バカじゃないの?」
……嘘だ。
本当は、同じ病院に運ばれたとモモカから聞いた時点で、来るんじゃないかとは思っていた。
だけど、日中はずっとモモカがいたから、面会時間が終わった深夜にコッソリ来るんじゃないかと思って起きたいたのだ。
しかし、来たのが深夜の二時は流石の僕でも計算外だよ。
……眠い。
だから、話は短めにしよう。
「お前が『冬花』だろうが『紫夏』でも『おまえ』は僕の中では『生きている』だから……お前が死んだから、僕が悲しいよ」
「――ッ!」
結局、僕が言いたいことはそれだけだった。
あの時、河川敷で出会ったボクっ子が死のうとしていたから助けたい。
それだけの簡単なことだったんだ。
「でも、ボクなんかを助けた所為で……お兄ちゃんは体が半分動かないって!」
「あぁ、まぁ……な」
確かに、今の僕は体の右半身がマヒして動かない。
あの時、屋上から飛び降りて落下するボクっ子を無理に抱きかかえてベランダに腰だから落下したのがヤバかったらしい。
モモカがクッションになる様に布団や毛布を用意していたとはいえ十一階から七階のベランダへの落下の代償は僕の右半身の麻痺というものだった。
まぁ、そうは言っても一ヵ月の入院とリハビリをすれは軽い後遺症が残るくらいで手足は動くってお医者さんが言っていたから大丈夫だろ。
「……本当に、ゴメンなさい」
「やっぱり、それを言いに来たのか」
彼女の中では自分には『冬花』でも『紫夏』として生きる価値がないと思い込んでいた。
そんな自分が助けられて、結局まだ生き続けている意味なんてあるのだろう? みたいなことを考えているんだろうな……。
マジで、モモカやおもクロ丸と出会う前の僕にそっくりだ。
だからこそ、今の僕が彼女に言えるのは――
「気にするな。だって、妹になってくれるんだろ?」
「アハ、何それ……バカじゃん」
それは、ようやく見せてくれた彼女の笑顔だった。
そう、彼女が今の自分に生きる理由を見出せないなら、僕が今の彼女に新しい生きる理由を与えてやればいい。
「僕は妹が欲しかったからな。手足の麻痺くらいで妹ができるなら、本望さ!」
あの某漫画の錬金術師だって、片腕片足なんだから、手足の一本で妹が拾えるなら安いもんだろう。
「ありがとう……お兄ちゃん」
「なんだ……ちゃんと、泣けるじゃん」
それは、泣けないと言っていた彼女が見せる初めての涙だった。
「……うん!」




