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第76話『妹に』



「似ているって……」



 僕は屋上の手すりに身を乗り出した状態で、なんとか飛び降りようとしたボクっ子の手を両手で握りしめていた。


 危ない……本当にあと少しでこのバカ屋上から……


そして、僕はさっきの言葉の続きを叫んだ。



「僕も過去に死のうとしていた!」



 それは、僕の過去の懺悔だ。


 初めて飼った野良猫のミカエルが家からいなくなって川でおぼれたあの日、僕はミカエルを追って自殺しようとした。


 だけど、それに失敗して……そして、生きている!



「お前はその時の僕に似ているんだ!」

「だから、助けるって言うの? そんなのただの自己満足じゃん!」



 確かに、自分が死ぬのに失敗したから、助けようとしているなんて言ったら、それはただの自己満足、お節介だ。


 だけど――



「違う!」



 僕には彼女を助ける理由がちゃんとある!

 だから、この手を差し伸べているんだ!



「何が違うって言うのさ……ボクは……」

「お前が生きたがっているから、助けたいんだ!」



 それが理由だ。



「そんなのボクは頼んでない!」

「なら、何で僕の手を掴んだ!」



 コイツが川に飛び込んだ時、僕は確かに川の中から助けを求めようとする彼女の手を見た。だから、助けなんて待てずに飛び込んだ。



「あの時、僕の手を掴んだお前は『生きたい』って思ったんじゃないのか!」

「――ッ!」



 その時、死にたがっていた彼女の目が確かに見開かれた。


 そして、片手でぶら下がっていただけの彼女の手に力が入り、両手で僕の手を掴んだ。


 ……よし! これで、俺も両手で彼女を引っ張り上げることができる!



「うわっあ!?」

「きゃあっ!」



 だけど、上半身を屋上の手すりから乗り出したことで、僕もバランスを崩して掴んだ彼女の手に逆に引っ張られそうになってしまう。


 さらに、このバカが濡れたままの青い手袋を付けている所為で、掴んでいる手が青い手袋だけすっぽ抜けてしまいそうでうまく力が入らない。



「お兄ちゃん……やっぱり、ボクはもういいよ」

「何も良く無いだろ!?」



 せっかく、僕が溺れたトラウマを乗り越えてまで助けて、飛び降りまでギリギリで食い止めているのにここで手を離したら僕のトラウマがさらに増えるだろ!


 だけど、彼女は握り返す手の力を何故か緩め始めた。



「おい、待て……止めろ!」

「無理だよ。だって、もう『ボク(わたし)』は死んでいるんだよ……」




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