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第75話『欲しかったもの』



「ボクはただ……」




『うん、紫夏の演技完璧だわ! わたしそっくり!』

『そんな……お姉ちゃんの教え方が上手いからだよ』




「冬花に演技を教わる紫夏が好きだった」



 ボクっ子はそう言うと目に涙を溢れさせながら震える手を握りしめた。



「それが理由だったのに……」



 そう言って、ボクっ子の青い手袋をした手が、屋上の手すりを乗り越えた。


 生きる理由が無い……。


 その言葉を聞いて、僕は何でこんなにもコイツが気になって仕方ないのか、その理由にようやく気付いた。



「そっちは危険だ!」

「もう、ボクには生きている理由が無いんだよ」



 今にも屋上から飛び降りそうなボクっ子に駆け寄り僕も屋上の手すりを乗り越えたその時――、


 ついに、ボクっ子が屋上からその身を投げた。



「ボクっ子、お前は……」



 そして、飛び降りたボクっ子の青い手袋を何とか握りしめながら、僕はようやく出て来たその言葉を彼女に叫んだ。



「死のうとしていた。過去の僕と似ているんだ!」




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