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第73話『死ぬ理由』



「帰るんじゃなかったのか?」

「もちろん、帰るつもりだよ」



 そういうボクっ子の目は明らかに死んでいた。

 何故か濡れたままの青い手袋も両手にしている。


 僕はその目をよく知っている。

 既に何かを諦めている人間の目だ。



「帰るって……もちろん家にだよな?」

「家なんてもう燃えちゃったよ……」

「…………」



 その返事だけで既にボクっ子に帰る気が無いのは明白だ。


 すると、ボクっ子が屋上の手すりに腰を下ろし「多分……」と言いながら、続けてこういった。



「ボクは……わたしを見つけて欲しかったんだと思う」

「……俺が見つけただろ?」



 少なくても僕は冬花でもなく紫夏でもない。あの日であった『ボクっ子』というお前を見つけた。そのつもりだ……。


 しかし、それがボクっ子の見つけて欲しかった『自分』だったのかは僕には正解なのかは分からない。


 すると、ボクっ子がポケットから何かを取り出してそれをこっちに投げた。

 それは小さな放物線を描いて、地面に落ちてから小さな音を立て地面に落ちた。



「お兄ちゃん、これ何だかわかる?」

「これは……」



 ゲームセンターのメダルか? 小銭のような大きさだが、地面に落ちたコインは裏面になっていて黒い面しか見えていない。



「これがどうしたんだよ?」

「わたしね。コイントスで裏が出たら死のうって決めていたんだ」

「は、それは……っ!」



 その言葉で……一瞬で、コイツが何を言っているのか僕は分かってしまった。

 そして、同時にその言葉の意味が分かってしまう自分に心底嫌気がさしてしまう。



「……いつからだ?」



 その言葉は、今この場で起きたコイントスのことを言っているだけじゃない。多分、コイツは既にそのコイントスを――



「ちょうど、お兄ちゃんと初めて会った日かな……」

「……そうか」



 やっぱり、そうだ。


 どうして、僕はこのボクっ子をこんなにも気にしてしまうのか謎だったけど、今ようやくその理由が分かった。


 コイツは……このボクっ子は――



「最初から、死ぬつもりだったんだな……」




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