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第63話『彼女のお願い』



「以上が、この舞台の裏側……だよ」



 そう言うと、ボクっ子……いや、冬花はまるで舞台挨拶をするかのようにお辞儀をした。



「一応、これもつけておいた方が分かりやすいかな?」



 そう言うと、ボクっ子口調になった冬花はポケットから見慣れた青い手袋を取り出して手に付けた。



「その手袋には何かあるのか?」

「紫夏は……発見された時、両手が燃え尽きていたの。だから、わたしが紫夏だったら隠すかなって思って……」

「……そうか」



 悔しいことに、それしか言葉が出なかった。

 だけど、無茶苦茶だった彼女の話にも納得がいく……


 実の妹が自分の身がわりになって死んでしまった姉の気持ちなんて僕には想像もつかない。


 だけど、あの時……僕と彼女が初めて会ったあの姿は――




『何で、最初に会った時に『冬花』って名乗ったんだ?』

『つい癖なんです……』




 ――そう彼女は無くなった妹のフリをしていた。



 きっと、僕の目の前の『彼女』は今でも演じているんだろう。

 無くなった妹の姿を……それが『ボクっ子』の正体だ。


 だから、始めて僕と出会った時に癖で自分の名前を……『冬花』を名乗った。



「ボクは演じることしかできないから」

「…………」



 僕ができる返事は……



「靴紐、ほどけているぞ」

「あ、本当だ」



 すると、彼女がしゃがみ丁寧に靴紐を結んだ。



「結ぶんだな」

「気づかなかったら、気にならなかったんだけどね」



 そして、彼女は人差し指を口元に当てて――



「だから、このことは秘密にしておいてね」



 それでも何かを演じているようにこう言った。



「お兄ちゃん♪」



 まるで、さっきまでカフェのメイドさんをしていた冬花さんと同一人物とは全く思えない。



 僕の前で妹のように振舞う『ボクっ子』の冬花。


 そして、まるでお姉さんのように落ち着いた雰囲気の『冬花さん』の彼女……


 はたして、今僕の目の前にいる『彼女』はどっちの『冬花』なんだろう?







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