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第62話『妹が亡くなった日』



『やぁ! ボクの名前はピーターパン! こんな名前だけど、朝はごはん派さ!』


『冬花! いい感情表現だ! 脚本をよく読みこんでいる!』

『冬花! 素晴らしい演技よ! 練習の成果が出ているわね』



 妹が姉の代わりに舞台の稽古に出ても、両親ですら姉妹の入れ替わりには気づけなかった。



『あたし……皆の前で歌うの緊張しちゃうかも……』


『紫夏ってば、ただのカラオケだよ』

『紫夏は恥ずかしがり屋さんだからね~』


『そ、そうかな? えへへ……』



 また、妹の代わりを演じていた姉も、当然妹の友達にその演技がバレることは無かった。



『あたしは紫夏の代わりに、わたしを演じる』



 姉は妹みたいに恥ずかしがり屋で、内気な妹を――



『わたしは冬花の代わりに、あたしを演じる』



 妹は姉のように落ち着いていて、完璧な姉を――



『冬花の演技がバレるまで』

『紫夏の演技がバレるまで』



 実の両親ですら、二人の入れ替わりに気付くことはできないのに、本気で入れ替わった二人の演技を見抜ける人間がいるはずも無かった。


 そして、本当に誰にも入れ替わりに気づかれぬまま、約束の三日間が過ぎて――


 あの火事が起こった。

 周りは冬花が死んだと思った。



『紫夏! 家が燃えているって!』

『冬花さんも家の中にいたって!』

『ち、ちがう……』




『あたしは紫夏の代わりに、わたしを演じる』


『わたしは冬花の代わりに、あたしを演じる』




 演じなければいけないと思った。




『冬花の演技がバレるまで』


『紫夏の演技がバレるまで』




 演じ続けなければならないと思った。

 だけど――



『冬花はわたしなの……』



 気付いた時には周りに全てを話していた。

 冬花の死体は紫夏として処理された。


 私は親戚のパン屋に引き取られて、そこで住み込みで学校に通うようになった。

 一夜で家族と全てを失った私に周りは腫れ物を扱うかのように接した。



 冬花わたしが生きて、


 紫夏あたしが死んだ。



 舞台だけにやってきた青井冬花は一日で全てを失った。

 家族も妹も、その舞台女優の未来すらも、


 だけど、全ては私の責任だ。


 あの時――



『あたしは紫夏の代わりに、わたしを演じる』


『わたしは冬花の代わりに、あたしを演じる』



 あんなことを言わなければ――



『冬花の演技がバレるまで』


『紫夏の演技がバレるまで』




 そして、私は毎晩、夜に妹の姿をして懺悔をするのだ。



『神様……』



 はたして、わたしはだれなんでしょうか?





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