第59話『最悪のシナリオ』
「家が燃えたって……それ大丈夫なのかよ……?」
「燃えたんだよ? 大丈夫なわけ無いじゃない」
ボクっ子はそう言うと、さも哀しそうに語り始めた。
「不幸にも翌日には姉の出演する舞台で家族は家でささやかなお祝いをする予定だった。だけど、学校の友達と遊びに出ていた妹だけは帰りが遅くなったことで、その火事の現場にはいませんでした」
そう言うとボクっ子は手を叩き『おしまい』と口にした。
「そんなお話……かな」
だとしたら、この話をしているボクっ子は……
「じゃあ、お前は妹の方なのか?」
「そうだね。このお話で生き残ったのは妹の青井紫夏ちゃん……」
だとしたら、僕達が最初に出った時のボクっ子も『青井紫夏』だったということだ。
だけど、あの時にボクっ子が名乗った名前は……
「でも、なら何で、最初に会った時に『冬花』って名乗ったんだ? それに、青井紫夏は死んだってお前が言ったんだろ?」
話が無茶苦茶だ。
ボクっ子の話の中では姉が死んでいて、でも、実際には妹が死んだことになっている。なのに、僕の目の前にいるのは死んだはずの青井紫夏だって言うのか?
すると『彼女』は悲しそうな声でこう言った。
「つい癖なの……」
「癖?」
癖とはどういう意味だろう?
僕がそう思っていると、ボクっ子はまるで秘密を明かす子供のような笑みの浮かべて言葉を続けた。
「もし、この話に裏があるとしたら……どうする?」
「うら……?」
「そう、お話の裏側だよ」
……何だろう。
僕の心の声というか……『直感』がここから先は踏み入れてはいけないと危険信号を出している気がする。
でも、ボクっ子が『誰』なのかはその話の裏とやらを聞かないと分からないのだろう。
そして、ボクっ子は僕の返事を待たずに、その話の裏側を放し始めた。
「実は二人の姉妹は入れ替わりをしていたのです」
それは、最悪のシナリオだった。




