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第57話『コイントス』



 店を出て、連れてこられたのは最初に出会った時と同じ河川敷だった。



「久しぶりだね……」



 確かに彼女とここに来るのは久しぶりだ。しかし、もう一つの彼女の方とは僕はこの河川敷を歩いたことが無い。


 だから、返答に少し困る。

 なので、僕の返答は……



「そうでもあるし、そうでもない……かな」



 一体、彼女は青井冬花なのか、または、青井紫夏……どっちの『彼女』なんだろう。



「君は……どっちなんだ?」



 いや、もしかしたら――



「どっちが本当のあたし……いや、ボクだと思う?」



 そう言うと、彼女はポケットから一つのゲームセンターにあるようなコインを取り出して、それぞれ表と裏を僕に見せて来た。


 まるで、表と裏がどちらかの自分を指しているかのように……



「表と裏、どっちが本当のボクが当ててよ。お兄ちゃん」

「まるで、運に本当の自分を委ねるみたいだな……」



 すると、彼女はコインを投げて結果が見えないように両手で挟んでキャッチした。

 キャッチしたコインは表か裏か分からない。



「……それとも、お兄ちゃんはわたしあたし、どっちのボクが好き?」

「…………」



 コイントスの結果は正直分からない。

 だって、僕はミレミアムな目を持っているわけでもないし、鬼を滅する鍛錬をした主人公でもないのだから……


 ……でも、それでも、分かることはある。そのコインが表か裏、どっちかは分からないけど――


 しばらく考えた後に、僕は一つの答えを出した。



「どっちを答えても『残念、こっちが本当の(ボク)でしたぁー』ってお前は言うんだろうな」

「――ッ!?」



 その僕の解答に、彼女はとても驚いた反応をしていた。

 どうやら、落第点だけはないようだ。




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