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第55話『カフェとメイドさんとお兄ちゃん』



 優雅な店の雰囲気を味わっていると、ちょいレトロ風のメイド服を着た店員さんがボクの目の前に優雅なしさで紅茶を目の前のテーブルに置いた。



「紅茶です」

「うむ……」



 メイドさんが持って来てくれた紅茶の香りを楽しみながら、僕が優勝に優雅なしさで優雅さを優雅もって楽しんでいると、メイドさんが優勝な笑顔を浮かべ伝票を裏返してテーブルの上に置きやがった。



「伝票です」

「うむ……」



 僕は優雅さを保ちながら、震える手を優雅に抑えて、優雅な笑みを保ちつつ、テーブルに置かれた伝票を優雅に確認した。


 ……午前のティーセット、

 お値段1500円か……。



「……よし」



 この店、メニューに値段が書いてなかったから金額確認するのが怖かったんだよな。


 え? なら、確認しろって?

 おいおい、この店の雰囲気を言ったら分かるだろう?

 こういう、店で値段なんてものを尋ねるのは……そう『優雅』じゃないんだよ。


 ……でも、この前の映画の半券みたいにモモカにこの店のレシートでも見られたら、後で何言われるか分からないな。


 よし、レシートは処分しておこう。



「それで、お客様は何故ここにいるのでしょうか?」

「それって、僕のセリフじゃない?」



 僕はただお客さんとして来ただけだし……



「この時間って、学校に行っている時間ですよね?」

「それって、冬花さんもだよね?」



「「…………」」 シーン



 お互い様だった。

 まぁ、僕はちゃんと学校をサボって来ているわけで、お客さんなことに変わりはない。


 すると、彼女が僕の目の前の席にメイド服姿のまま座って来た。



「わたしだって、ここが職場なんです」

「なら、今は仕事中だよね? その姿で座っていいの?」

「さっき、休憩もらいましたから」



 あ、そうなんだ。

 わりとゆるい職場なんだな。



「てか、職場ってどういうこと? 学校は?」

「住み込みなんです。学校は事情があって行っていません」



 ああ、そうなんだ。

 てか、僕の周りの女の子、学校行ってない奴多いな。


 その時、何やら足元で動くような気配を感じた。



(カサ)



「「……ん?」」



(カサカサ)《(✿✪‿✪。)ノコンチャ♡



「あ、ゴキ――」

「嫌ぁああああああああああああ!」



 突然の黒い物体の出現により、椅子を蹴っ飛ばし、僕は飛び上がった。


 そう、僕だけが叫び声を上げて飛び上がったのだ。


 他の客も他の店員もちょっと見たくらいで「あぁ、アレが出たのね」みたいな反応で直ぐに興味を失ったかのように談笑や仕事を優雅に再開し始めた。



「ちょっと、失礼しますね」



 そういうと、僕の目の前に座っていた彼女が優雅にスッ……と立ち上がって――



「お外にお帰りなさい」



 流れるような動作でヤツをちりとりで取って店の外に逃がした。



「虫、嫌いなんですか?」

「あああ、あれは虫で片付けていいものでは無いだろ!?」



 家でも、出ただけで一週間は不安で一人では眠れなくなるというのに……

 てか、何でこの店の客も店員の微動だにしなかったんだ!?



「こういうレトロな雰囲気を売りにしたお店って意外とお店にこういう『虫』が出やすいので従業員も常連のお客様も慣れてしまっている人が多いんですよね……」

「れ、れ……」



 レトロってやべぇえええええええぇええええええええええええ!

 もう、レトロな雰囲気も、何もかもぶち壊しだよ!


 でも、これで一つ確認したいことは分かった。



「そろそろ、終わりにしようか」

「何がですか?」



 そう言って、惚ける『彼女』に向かって、僕は優雅に指摘した。



「キミは『冬花さん』じゃない」

「何を言って……」



 僕はこの店で一つの結論を得た。

 それは――



「青井紫夏(しきか)。だっけ」

「…………」



 それとも、こう言った方が良いかな?



「お前『ボクっ子』だろ?」





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