第54話『コインの表と裏』
「じゃあ、学校行ってくるから、おもクロ丸を宜しくね」
「はいです」
「ニャー」
翌日、そう嘘を伝えて僕は白いマフラーを首に巻きおもクロ丸を抱えて見送りをしてくれている彼女を残して家を出た。
確かに学校には行くつもりだ。
だけどそれは僕の学校じゃない。
青井紫夏。冬花さんが去年無くなったと言っていた。ボクっ子の学校だ。
冬花さんから通っていた学校は聞いた。
青井紫夏……青井冬花と名乗っていたボクっ子の本名。
そして、去年無くなった冬花さんの双子の妹……
あの後も、僕はボクっ子《紫夏》に会うことはできてない。冬花さんの言う通りボクっ子、紫夏は本当に幽霊なのか?
「いや、実際に僕はボクっ子と会っているし会話もしているじゃないか」
だから、今日は自分の学校をサボって、ボクっ子、青井紫夏が通っていたという学校に来たのだ。
「幽霊なんてバカバカしい」
僕が信じるのはあの時あった『冬花』と名乗ったボクっ子だ。
幽霊でも紫夏とかいう女の子でもない。
ボクっ子、あいつは実在する女の子だ。
だから、調べる。
別に、ボクっ子のことが気になっている……とかいうわけでは無いけどね?
まぁ、でも……一応はおもクロ丸を拾ってもらった縁もある。
ここで、お別れなんていうのも寂しいだろう?
だから調べる。
それだけだ。
ということで、僕が目を付けたのがボクっ子の学校だが
ここで一つ重大な問題が発覚した。
それが、僕が彼女に今日ここに来るのを嘘を付いてまで誤魔化した理由なのだが……
なんと青井紫夏が通っていた学校は昔、僕の彼女のモモカが受験に失敗したお嬢様学校だったのだ。
僕の彼女は昔度重なる家のお嬢様学校への教育と受験失敗で現在高校を中退している。
そして、その彼女が受験失敗の決め手となったのが今回、青井紫夏の通っていた学校だったというわけだ。
「まったく、どんな偶然だって言うんだよ……」
こんなの彼女に言えるわけがない。
かくして、僕は一人で今回の件を調べることにしたのだった。
「あのー、君ここの学校の子だよね?」
「え~、なんですか。ナンパ?」
この反応に、この話方、確かにそう思われても仕方ないんだが……もし、こんなのがモモカにバレたら、めっちゃ詰められそうだなぁ。
「少し聞きたいことがあってさ、青井紫夏って女の子知らない?」
「え~、知らない」
「見た目はボーイッシュでボクっ子が口調何だけどさ!」
「聞いたこと無いかな? ゴメンね」
そんな感じでお嬢様学校の周りを一時間くらい張り込みして聞いてみたのだが……
「そんな子いたっけ?」
「分からな~い」
「そんな目立つ子なら誰か知ってそうだけどねー?」
意外なことに情報は何一つ集まらなかった。
「くっそう、まさか、学校に通ってなかったとかないよな……?」
実際に有名なお嬢様学校だ。
あのボクっ子がちゃんとここに通っていたという保証はない。
聞いても誰も知らない。
名前も覚えていない。
なのに、彼女と僕はあったことがある。
「ボクっ子、お前は一体何処にいるんだよ……」
冬花さんは、確かに青井紫夏は死んだと言っていた。
しかし、僕はそいつと会っている。
もしも……もしもだ。その青井紫夏という人間が死んでいるとして、じゃあ、あの日僕が拾った女の子は一体誰なんだ?
しかも、それが、モモカが通う予定のお嬢様学校の生徒だとしたら何か関係があるんじゃないか?
いや、考えすぎか……。
「……だとしても……だ」
僕とアイツは実際に会って会話もしている『青井紫夏』という人間がいなくてもあの日僕が拾った女の子は何処かに実在するはずだ。
実は生きていて、行方をくらましているとか……いや、だったら何で姉の青井冬花なんて名前をかたっているんだって話だし、姉の冬花さんに連絡しないのもおかしい。
とりあえず、もう少し聞き込みをしてみるしかないか。
「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど良いかな?」
「何? 何ですか?」
「ねぇ、この人ずっといるし、そろそろ先生呼んだ方が……」
まずい! 長くいすぎたせいか変質者だと思われている!?
流石にお嬢様学校なだけあってか、警備の人も出て来たみたいだし、この質問を最後に切り上げるか……
「青井冬花って知っているか」
その瞬間、確実に空気が凍ったようにその場にいた女子生徒達が息をのんだ。
「「「――ッ!?」」」
それは明らかに、異質な間だった。彼女達は確実に僕の知らない何かを知っている。
しかし、それ以上に問題なのは――
「キミ、何処の学生だ!」
――ヤバイ!
警備の人が今の空気で何かあったのかと勘違いして声をかけて来た!
「あの……この人が……」
「僕は何もしていない!?」
仕方ない! とりあえず、ここを一旦引こう!
「キミ! ちょっと、待ちなさい!」
バーローッ! この状況で誰が待つか!
逃げるんだよぉおおおおおおお!
「はぁ、はぁ……なんとか逃げ切れた……」
息を整えながら、下を見ていると、靴紐がほどけているに気が付いた。
多分、さっき走っていた時にほどけてしまったのだろう。
「何処か休憩でもするか……」
そう思って、近くを見渡すとちょうど良さそうな喫茶店を何件か見つけた。
近くが女子高になっている所為なのか、やたらとしゃれた喫茶店がこの辺りには多いようだ。
「とりあえず、この店にするか」
その中で僕が選んだのは昔ながらのレトロな雰囲気のカフェだった。
決して看板にメイド服風のお姉さんが映っていたからなんて理由で決めてはいない。
そんなドキドキムネムネする思いを期待に込めてドアを開くと……
「やっぱり、スタッフさんもメイド服なのかな……」ドキドキ
「いらっしゃいませ~」
結論から言うとメイド風の店員さんはいた。
いたのだが……。
「……え」
「あ……」
でも、それ以上に僕は別のことに驚く結果となった。
長いロングの髪にだけど、僕が探していた女の子と瓜二つの顏、そして、雰囲気から漂う清楚さ……
「冬花……さん?」
「……サトルさん」
何故なら、冬花さんがそのメイドさんになっていたからだ。




