第50話『探し物はなんですか?』
「サトルくん、手つないでください……」
映画館を出るとにじみ出そうになる涙をこらえながら、白いマフラーに顔を埋めて彼女がすがるような声でそう言った。
差し出している手が震えている。
どうやら、よっぽどさっきのホラー映画が怖かったらしい。
どこかのボクっ子と同じ展開だな……。
「むぅ……サトルくん、今他の女の子のこと考えましたよね?」
「えぇ、何で分かるのぉ……」
女の勘ってやつなのだろうか?
それとも、僕が単純に分かりやすいだけなのか?
「むぅ……誰のことを考えていたんですか?」
まぁ、言わなくても分かっているんですけど……みたいな彼女の冷たい視線が僕を見つめている。
じゃあ、言わなくてもいいじゃん。
「むぅ! 今『じゃあ、言わなくてもいいじゃん』って思ってますよね!」
「いあたた!? 足ふまないで!?」
だから、何で分かるの!? てか、これ、言わなくても分かるなら言っても言わなくても足を踏まれている気がするんですけど!?
「観念して大人しく吐いてください!」
それは、つまり、全てバレているということなのだろう。
だから、大人しく僕は全てを白状することにした。
「はい、ボクっ子と同じ映画を見てきました……」
しかし、彼女の追及は止まらない。
彼女は首に巻いた白いマフラーを僕の首になれたように巻き付けて言った。
「ボクっ子って誰ですか?」
「冬花だよ。ほら、おもクロ丸が懐いて離れなかったから僕が拾ってきた女の子だよ」
「何で、そんな女の子の名前まで覚えているんですか!?」
「そこで怒るのは理不尽だろ!?」
自分で『誰ですか?』って聞いておいて、名前を答えたら『何で名前を憶えているんですか!?』って引っかけにもほどがあるだろう!
そう言い争っていると、偶然目の前を一人の女の子が僕達の話に反応してきた。
「冬花……」
ん……?
なんか、目の前を通りがかった女の子のが『冬花』という言葉に反応して立ち止まった。
すると、その女の子も僕達の視線に気づいたのか、僕達に向かってこう尋ねた。
「えっと……今、わたしのことを呼びましたか?」
そういう彼女は――
「え、ボクっ子……?」
冬花と、そっくりの顔をしていた。




