第39話『冬花』
ボクは探しものをしていた。
「とりあえず、自己紹介しよう。僕は安達サトル。キミは?」
河川敷であったお兄さんに名前を聞かれた。
とっさにボクは自分の名前を答えてしまった。
「ボクは……青井冬花」
「ニャー」
すると、ボクの手に中にいる黒猫が可愛い声で鳴いた。
この黒猫は河川敷で見つけた。
何故か、ボクに懐いて困っている所に、この猫の飼い主らしきお兄さんが現れたのだ。
悪い人じゃなさそうだけど――
「こっちの猫の名前はおもクロ丸っていうんだ」
……ネーミングセンスはとても悪い人らしい。
「ニャ……」
……若干、猫の方も名前を嫌がっているように思えるのは気のせいなのかな?
「それで、何でおもクロ丸がキミといるの?」
「だって、この猫が離れないんだもん」
むしろ、こっちの方が迷惑しているくらいだ。
その後、黒猫がどうしても離れてくれないので、ボクはそのお兄さんの家まで一緒に向かうことになってしまった。
普通なら、初対面の男の人の家に行くなんてありえないと思う。
でも、この猫がボクから離れてくれないから仕方ない。
それに、お兄さんもネーミングセンス以外はあまり『悪い人』とはなさそうだし……。
「キミは何であんな場所にいたの?」
「別にただの肝試し……」
「肝試しってまだそんな季節じゃないだろうに……」
「ニャー」
途中での会話も何故か安心して『自分のこと』を話してしまった。
まぁ、いいか。
そう、思ってしまうくらいに何故か『ボク』はそのお兄さんに不思議な安心感を抱いてしまったのだ。
「靴ひも……」
「え?」
突然、お兄さんがそういうので、足元をみると、ボクの靴ひもがほどけていた。
「ほら、ウチの猫抱えてると邪魔で結べないだろ?」
すると、お兄さんがしゃがんで、ボクの靴ひもをわざわざ結んでくれた。
「あ、ありがとう……」
別に靴紐なんて、後で結べばいいのに……
「お兄さんは……」
「……ん?」
だからだろうか?
そんな言葉が出てきてしまったのは――
「なんか……お兄ちゃんみたい」
「お兄ちゃん!? 別に、僕に妹はいないけどな……」
「ふーん、そうなんだ……」
「ニャー?」
お兄さんもこの猫も何故かよく分からないみたいな顔をして驚いていたけど、別にボクはそんなおかしくは感じなかった。
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「また、女の子を拾って来たんですか!?」
お兄さんの家に付くと、白いマフラーをした彼女らしき人が出て来た。
どうやら、お兄さんは女の子を拾ってくる常習犯らしい。
……どうりで手慣れているわけだ。
「サトルくんが浮気です!」
「違う冤罪だ!」
「ニャー」
そのお兄さんには『家族』がいた。
ふと、お兄さんの家に来るまでの何気ない会話を思い出す。
『お兄さんって……なんか、お兄ちゃんみたい』
『お兄ちゃん!? 別に、僕に妹はいないけどな……』
『ふーん、そうなんだ~♪』
なるほど……お兄さんには『家族』がちゃんといたんだ。




