第34話『キミの声』
「さむいです」
猫を見つけ終えた僕達は、そのまま川沿いの草むらの上で疲れ切って寝そべっていた。
僕と彼女の間に子猫のおもクロ丸を挟んで、二人と一匹で文字通りの川の字になっている。
「寒いね……」
「シャー」
こいつは未だに僕に懐いてない。
でも、そのおかげであの暗闇の中から見つけることができたわけだしそれでいいのかもしれない。
だけど……
「猫缶はもう少しいいのを上げた方がいいかもな」
「それは良いと思います!」
「ニャ~♪」
コイツ……こんな時だけ甘い声で鳴きやがった……
「サトルくんはわたしのこと好きですか?」
「もちろん好きだよ」
すると、彼女が何かを懺悔するかのように気持ちを吐露し始めた。
「多分、わたしは……誰かに愛して欲しかったんだと思います」
まぁ、ここまでの関係になっているのだから今更な気もするけど……そう言えばちゃんと言葉にしたことは少なかった気がする。
なら、彼女がその気持ちを吐露するなら、僕も自分のことを少し話すべきだろう。
お互いのことをもっとよく知るためにも……
「きっと、僕は責任を背負いたくなかったんだと思う……」
愛されることも、愛することも、僕には背負う責任が大きすぎると思っていた。
それが一番の『ひろう』と『すくう』の違いなんだと僕は思う。
何かをひろうということはその責任や重みを背負う行為だと思っているからだ。
だからこそ、あの時川でおぼれて『救われた』だけのボクは誰にも拾われずに捨てられてしまった。
そして、僕は彼女の髪を触ろうと手を伸ばした。
「どうしました? おっぱいですか?」
……いや、なんでだよ!
「ちがうよ。ただ、モモカに触れたくて……」
救うだけなら感謝されるだけで済むが、拾うという行為は……
こうして愛着がわいてしまう。
「なのに、サトルくんはわたしも拾って猫ちゃんまで救ってくれたんですね?」
「うん……」
ホント……なんでだろうね?
あと、猫の名前、おもクロ丸だからね……?
「なら、猫ちゃんとわたしで、二つも危なかっしいのがいたら、サトルくんも大変で過去のこととか死とかを思い出す余裕なんて無くなると思うんです」
「なるほど……?」
つまり、二つも責任があれば簡単には死ねないということだろう。
すると、彼女はまるで告白でもするかのように優しい笑みを浮かべた。
「だから、わたし達を拾ってください」
彼女は自分と猫の二人分の命を僕に背負えと言っているのだ。
そして、彼女は僕の差し出した手に触れてこう言った。
「その代わりにわたし達があなたを幸せにします」
これは――何と魅力的な提案だろうか?
思い出に残っている猫の鳴き声が聞えたような気がした。
『ミャー』
今度こそはこの重みは手放さないようにしようと思った。
「……喜んで」




