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第32話『RPGのお姫様』



「よしよし、です……」



 学校が終わった後、何故か僕は猫と姉がいる自分の家ではなく、彼女の自宅に行き、彼女の部屋のベット上で、彼女の胸枕を堪能していた。



「サトルくん、大丈夫ですか?」

「ちょっと、疲れたかも……」



 そして、何故か僕は疲労していた。

 彼女をひろうとしたら、僕がひろうさせられて彼女はまったくひろうしていなかった。

 だから、ひろうした僕は彼女の胸を枕にして彼女のベットで寝ているのである。



「サトルくんは後悔してますか?」

「後悔してないと言ったら嘘になるかもしれないけど……」

「けど……?」


「それでも、僕は『ひろう』って、決めたからね」

「やっぱり、サトルくんはいい子です……」



 もし、彼女を救っただけなら、ここまで僕が疲労することなんて無かったんだろう。

 だからこそ、僕は『拾う』という言葉には、その拾った『何か』を最後まで見届ける責任と重さがあると思う。


 救うだけは簡単だ。


 もし、僕が彼女を拾わなければ、雨の日に雨宿りだけさせて家に帰らせれば、

猫だけを救っていれば……

 その後の彼女のことを気にすることもなかったし、それに責任や重さを感じることもなかったのだろう。


 例えば、RPGで勇者が姫を救い出したとしても、姫を城に送り届けさえしたら、勇者は姫のその後のことなど考えずに旅を続けるだろう。


 でも、もし、姫が道端で捨てられていたら?

 それを勇者が拾ったとしたら?

 多分、勇者は世界を救った後でも拾った姫のことは最後まで面倒を見るんじゃないだろうか?


 それが、僕の思う『拾う』と『救う』の責任の重さだ。


 ただ『救う』だけの行動に何かを『拾う』ほどの重さはない。


 誰かを『救った』という言葉一つで全てを終わらせてしまう。まるで救ったから、その後はどうでもいいみたいに、


 だけど『ひろう』は責任があるから思いし、その分『ひろう』もするし、だから命の重みを感じられるのだと思う、


 すると、僕の考えが口に出ていたのか、突然彼女が体勢を入れ替えて僕の上にのしかかって来た。



「サトルくんは《《これ》》が重いって思いますか?」

「この重さなら……僕は大歓迎かな……?」



 やっぱり、おおきいものほどしあわせを感じるし、この感触はとても素晴らしいものだと思います。


 その時、ベットの端に置いてある彼女の白いマフラーが目に入った。

 ふいに普段は見えない彼女の首元を見てしまう。


 その『跡』も全部、僕がひろった重さなんだろう。


 でも、この『おもさ』が僕の罪と幸せの重さだ。


 きっと、僕はこの後の人生も、猫を裏切って生きた責任の重さと彼女を拾った責任の重さを背負いながら生きるしかないだろう。


 あの時にボクが死ねなかったからこそ、彼女を救った責任を今の僕が背負えるのだ。



 すると、彼女のスマホから電話が鳴った。



 何だろう……またお母さんがいきなり帰って来たりしないよな?

 しかし、今度の電話の相手は意外な人だった。



「もしもし……あ、お姉さん!」



 ちょっと、待て! 何で君が僕の姉の電話番号を知っているのかな?

 知り合ってまだ三日も経ってないはずだし、そもそも、姉が電話をするなら僕に――



「あ……」



 そこまで考えて姉が知っているのは僕の部屋の番号だけで、スマホの番号は知らないということに気付いた。


 そうか、僕って姉にスマホの番号は教えて無かったな……

 いや、それでも、彼女は姉といつ番号を交換したのだろう?



「サトルくん、大変です!」

「どうしたの?」


 すると、スマホで姉と電話していた彼女が慌てたようにこう言った。



「猫ちゃんがいなくなったらしいです!」





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