第31話『家族になれる方法』
『お姉さんから聞きました』
彼女は確かにそう言っていた。
「何処まで聞いたの?」
「えっと……」
少し、言いづらそうに……白いマフラーを握りしめながら彼女は遠慮気味に言葉を選んで話してくれた。
「サトルくんが、自殺しようとして助けられたってところまでは……」
「なるほどね……」
じゃあ、僕が一人暮らしするまでの経緯を殆ど聞いたというわけだ。
まぁ、正確には『死のうとした』は違うんだけどね。
でも、死んだ猫の後を追おうとして死にかけたのは本当だから、否定しなくても良いか。
死を体験しかけた。彼女にとってはそれが気になる部分なんだろう。
実際に、事件の後は周りから見たら、僕が後追い自殺をしようとしたように見えるだろうしな。
それもあってか、僕の家族は再びバラバラになった。
あの事件以降、母も父も『僕』を理由に会話をしなくなったのだ。
まったくもって皮肉なことに……だ。
元々、バラバラだった家族が一匹の猫を理由にして一つになれたように、僕の起こした事件がきっかけで、あの家族にも再びバラバラになる『理由』を与えてしまった。
だから、僕は高校進学を理由にあの家を出ることにした。
そうすることで、あの家は再び『家族』としての形を取り戻せたからだ。
僕という人物がいることで母も父も僕を理由に喧嘩するようになるなら、僕という人物がいなくなることで、僕を除いた新しい『家族』の形ができる。
それが、猫というコミュニケーションを失ったあの家が再び『家族』になれる方法だった。
多分、姉が家に定期的に来るのも、僕の監視に来るように親から言われているのだろう。
だからこそ、僕とあの家族を繋ぐのは姉の役割になってしまったことだけは少し申し訳なく感じる。
「なんだか……」
「……?」
そんな僕の話を聞いて彼女は絞り出すようにいった。
「わたしの家と似てます」
「……そうかもね」
今度は自然とお互いの手が触れ合った。




