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第26話『お世話係り』



「たっだいま~……お?」



 翌朝、姉がウチにやって来ると、さっそく僕達の異変に気付いたようで朝の僕達のやり取りを無言で見つめていた。



「サトルくん、歯磨きしましたか?」

「……まだです」


「ちゃんと、してください! 歯磨きは朝と夜二回するんですよ?」

「はい……」


「あとお風呂掃除したのいつですか! 排水溝が詰まってます!」

「すみません……」


「冷蔵庫の中もキッチンも掃除してないですよね?」

「……はい」


「一人暮らしなら、もっとちゃんとお掃除してください!」

「はい、すみません……」



「……二人とも何しているの?」



「はぇ! お、お姉さん……っ!」

「何って……見ればわかるだろ?」



 無論、大掃除である。


 何故、僕達が今さらそんなことをしているのかというと、それは昨日の夜の彼女の言葉にさかのぼる―……






「わたしが、さとるくんのお世話をします!」


「えっと、それは……僕がモモカのペットになるってこと?」

「そうじゃないです」



 あ、そうではないのね。



「サトルくんがそうして欲しいのならそうしますが……」

「いやいやいや、大丈夫です!」



 危ない危ない。あやうくさらに変な関係になる所だった……。



「お世話っていうからそういう意味かと思ったよ」

「……えっと、そういう意味じゃなくてですね」


「じゃあ、どういう意味なの?」



 すると、彼女はこう言った。



「今日から、わたしがここに住みます」

「まさかの、住居乗っ取り!?」



 衝撃の発言、どうやら僕の城は彼女に乗っ取られてしまうらしい。


 しかし、彼女の次の発言はそのようなものでは無かった。



「うーん、どちらかというと……わたしがサトルくんのお世話係ですかね?」

「おせわ係……?」



 すると、彼女はこの部屋を一瞥しハッキリと言葉にした。



「はい、サトルくんのお部屋は正直に言って汚いです!」



 つまり、一人暮らしの僕部屋は彼女がこれから住んでいく(生きていく)のに汚かったのである。






「だから、大掃除ねぇ~」



 話せない部分はカットし、昨日の成り行きの話を聞いた姉の感想はそんなものだった。


 まぁ、その結果が『僕の私生活がヤバイから大掃除してます』なのが、とっても情けないのだが……


 てか、自分《彼女》の部屋が《《アレ》》だったのにメチャクチャいうじゃん……。



「サトルくん、ごはんはどうしますか?」

「あぁ、猫のごはんならもう上げたよ」


「シャーっ!」


 あいかわらず、僕が世話をすると威嚇されているけどね。



「もう! 猫ちゃんのごはんじゃなくて、サトルくんのごはんの話です! まだ朝ご飯食べてないですよね?」

「あぁ、そっちね……」



 どうやら、彼女の言っている『ごはん』は別の意味だった。



「でも、もう直ぐ学校に行く時間だし朝ごはんは無くてもいいかな……」

「ダメです! 朝ごはんはちゃんと食べないとダメです! 待ってください今すぐに冷蔵の中にあるので作ります!」

「はい、すみません……」



 そんな僕達のやり取りをみて、姉は腹を抱えて爆笑していた。



「アハハハ! サトルちゃんってば……すっかり、モモカちゃんの尻に敷かれるのが板についてるじゃない?」



 ……いや、笑いすぎだろ。



「わたしはサトルくんが拾ってくれた恩を自分の体で払うって決めたんです!」



 うん、気持ちは本当にありがたいんだけど……



「その言い方は別の意味に聞こえるから止めてくれないかな?」

「ほぉう~? 弟よ。こ・れ・は・どういうことかなぁ~?」



 ほら、厄介な奴《姉》が食いついて来やがった……。



「でも、サトルくん。違う意味って言いますけど、実際にわたし達って――」

「おわぅとぅわぁあああああああああああああ!?」



 おまっ! バカこらアホ!?

 一体、姉の前で何を言おうとしているんだ!?


 そんな風に僕が慌てているのを見ると、彼女は笑みを浮かべて代わりにこう言った。



「それに、わたしはサトルくんのお世話係ですから!」



 それを聞いて、姉は何か納得したように頷いた。



「まぁ、そういうことにしてあげましょう♪」

「お、おう……」



 本当になんとか命拾いした気分だ。

 なるどね。彼女と付き合うということはこれからこのようなことが続くのか……。


 すると、彼女が一つのお茶碗を持って来た。



「サトルくん!? 冷蔵庫の中何でこれしかないんですか!? その所為でこんなものしか用意できないです!」



 そう言って、彼女が出して来たのは簡単なお茶漬けだった。


確か、冷蔵庫の中には猫缶と麦茶くらいしかなかったはず……むしろ、僕の冷蔵庫の中からよくお茶漬けを錬成できたものだ。


もしかしたら、彼女は立派な錬金術師になれるのかもしれない。



「ありがとう。いただくね。モモカは食べないの?」

「はい。わたしは後でコンビニでまともな物を買ってきます」


「なるほど……」



 じゃあ、このお茶漬けは『まともな物』ではないのだろうか……?

 少しだけ不安になるけど、まぁ、別に大丈夫だろう。



「うん、美味しい」

「よかったです!」



 そろそろ、学校に行かないと本当に遅刻するな。



「ごちそうさま! じゃあ、学校に行ってくるからその間、猫ことは任せるね」


「うん、お姉ちゃんに任せて」

「はい、猫ちゃんのことは任せてくださいです!」



 あれ……おかしいぞ?


 姉はまだしも、何で彼女までお留守番するかのようなことを言っているんだ?

 キミも僕と同じ学校だよね……?


 すると、姉も同じことを思ったのか彼女に質問をした。



「モモカちゃんは学校行かないの?」

「わたしは猫ちゃんの面倒を見るんで大丈夫です」

「大丈夫だよ。猫ちゃんならアタシが見るから、モモカちゃんも学校行ってきなよ♪」


「学校ですか……あれ、言ってませんでしたっけ?」



 そう言って、彼女は何でもないように……


 それこそ、僕の部屋が汚いとか、冷蔵庫の中がスカスカだとか、そっちの事の方が大事かのように、何ともないように言った。



「わたし、高校は中退しているんですよ」



「「えぇえええええええええええええええええええええええぇぇえーーーーっ!?」」





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