第25話【三日目】『救うモノと拾うモノ』
「僕は死ぬのに失敗したんだ」
わたしのことを『好き』かどうか聞いただけなのに、彼の返事はわたしの予想したどの返事よりもヘビィーなものでした。
「えっと、それは……わたしと同じってことですか?」
つい昨日、わたしは死ぬつもりでした。
つまり、彼も信じがたいことですが、わたしと同じように死のうとして昨日あの場所で出会ったという?
それはそれで、なんか運命的な感じもします、
だから、彼がいう『死ぬのに失敗した』も『そういう意味』なのかと思ったのですが……
「うーん、それとはちょっと違うかな」
どうやら、わたしの考えとは違ったようです。
「昔にね。事故で死にかけたんだ」
「あ……」
その時、今さらになって彼のお姉ちゃんの言葉が頭をよぎりました。
『弟はやめときなさい』
あれは……これを知っていたから出た忠告だったのでしょうか?
でも、それほどの理由には思えませんが……
「その事故で、僕は死ぬのが怖くなって生きるために逃げて来たんだ」
「生きるために逃げる?」
「うん」
「どんな事故だったんですか?」
「ちょうど、モモカと出会ったあの川沿い辺りだったと思う。あそこで溺れたんだよ」
「ふぇ!?」
まさか、あの川の中に……ですか!?
「本当にそのまま死んでもおかしくない事故だったんだけどね。でも、偶然それを見ていた人がいて、助けが間に合って……僕は命を救われたんだ」
「その……事故って言ってましたけど……」
わたしは自分がしようとしていたことを彼がしたのかと思いました。
しかし、彼は何ともないようにそれを否定しました。
「僕の場合は本当に事故だったんだけどね。でも、それがきっかけで家族とはいづらくなったね……」
「あ! だから、一人暮らしだったんですか?」
このマンション……高校生のサトルくんが一人で住むにはおかしいとは思っていましたが、そういう理由があったんですね。
「でも、お姉さんは……?」
「姉は監視役だよ。親の代わりに、たまに様子を見に来て親に報告しているんだ」
「あ、なるほど……」
そこでお父さんやお母さんでなく、お姉さんが来るというのが、彼と家族との距離の遠さを物がっている気がします。
もしかしたら、わたしの家族と少し似ているのかもしれません。
「まぁ、そういうことがあって、家族といるのも気まずくなってね……。高校に行くのを理由にこのマンションに逃げるように一人暮らしを始めたってわけさ」
「サトルくん……」
「でも、そんな僕が同じ場所で子猫と君を拾うなんておかしな話だよね」
その瞬間、この人は……わたしと似ていると思いました。
家庭環境や親への気持ちもそうかも知れない。でも、それ以上にわたしとどこか似ていると思ったのは……
この人は《《失う》》ことを怖がっている。
だから、似ているし、見捨てることはできないと思った。
「決めました」
「何が……?」
「サトルくんがわたしを拾ってくれるなら……」
わたしが彼にしてあげれることはなんだろう?
彼がわたしを拾ってくれたなら、わたしは彼を救いたい。
だから――
「わたしが、さとるくんのお世話をします!」




