第24話『告白』
「サトルくんって呼んでいいですか?」
彼女の胸に顔を埋めていると、不意にそんな提案をされた。
そんな彼女の首には白いマフラーが巻かれている。
「はほふふん?」
「おっぱいの中で喋らないでください。何を言っているか、分からないです」
ダメか……しかし、おっぱいには幸せが詰まっているというのに、何故その幸せを自ら離すなんてことをしなくてはいけないのだろうか……
僕は渋々ながらも彼女の胸から顔を上げて答えた。
「別に、いいよ」
「良かったです」
すると、彼女はまるで猫みたいに頭をこすりつけてきた。
これは嬉しいアピールなのか?
だとすると、僕の方も彼女を名前で呼んだりした方がいいのだろうか。
「何か呼んでほしい呼び方とかある?」
「サトルくんの好きに呼んでくれていいです」
「えっと……じゃあ、僕はモモカでいい?」
僕がそう言うと彼女は嬉しそうに返事をした。
「はい、サトルちゃん」
……『ちゃん』付けは止めてほしいかな。
「ミャ―」
すると、子猫がいつの間にか起きて鳴き始めた。
むしろ、さっきまで良く寝てたもんな、お前。
「どうやら、ご飯の催促みたいだね」
「もう、深夜ですしね……」
しかし、まさかことな事になるとは昨日からは想像もつかなかったな……。
だって、この子猫と彼女を拾ってからまだ一日しか経ってない。
昨日の夕方に彼女を見つけて、姉が帰って来て、夜に家に送って、翌日には彼女の家にご招待からの今日の夕方にはコレだ……
一日一日が濃密すぎるだろ……。
こんなの昨日の時点の僕に言っても100%信じないよな。
「ほい、ミルクと餌だぞ」
「シャー!」
子猫にミルクと猫缶をあげたら威嚇された……。
いや、何でだよ!
まったく、この子猫と仲良くなるには一日どころじゃ足りなさそうだな。
「サトルくん」
「……なに?」
僕が立ち上がって子猫のミルクと猫缶を用意していると彼女が僕の名前を呼んでいた。
やっぱり、名前で呼ばれるのは慣れていないから反応が一瞬遅れるな。
すると、彼女は首に巻いた白いマフラーに顔を埋めて少し怯えているかのようにその質問をした。
「わたしのこと『好き』ですか?」
「あぁ……」
これは……言っておいた方がいいのだろうか?
「……?」
「…………」
しばらく悩んだが、彼女は黙って僕の反応を見ていた。
多分、彼女も昨日の今日でこうなったことに僕と同じようなことを思っているんだろう。
だからこその『好き』ですか? なんだろうな。
まぁ、僕としては彼女を拾ってしまった責任は取るつもりなんだけど……
むしろ、彼女の方が僕のことを本当に好きだと思っているのか謎だ。
なんなら、今でも実は騙されているんじゃないかと半分くらい思っている。
……しかし、騙されていたとしても、その場合は命を捨てようとした女の子なんていなかったということで、僕が騙されたと言う結果が残るだけだ。
だから――
「好きだよ」
「……本当ですか?」
「あぁ……」
《《これ》》は拾った命だ。
なら、自分の命の責任は何処にあるのだろう?
勝手に救われた『命』はどう生きればいいのだろうか?
誰も拾わないなら、僕は『救う』だろう。
しかし、こういう関係になってしまった以上、彼女も『僕』という《《人間》》を拾ってしまったのではないだろうか?
だから、僕は『《《それ》》』を打ち明けることにした。
「僕は死ぬのに失敗したんだ」




