第21話『メッセージ』
「……ただいま」
「お邪魔します……です」
あの後、僕達は彼女の家から直ぐに出て、逃げるように僕の家へと帰って来た。
「ニャー」
「あらら~? サトルちゃんってば、朝からガールフレンドに会いにったと思ったら……なんか、仲良しさんになって帰ってきたんじゃない~♪」
玄関には、姉が子猫を抱えて出迎えてくれていた。
てか、彼女はガールフレンドでもないって……
因みに、姉の『仲良しさん』というのは、僕と彼女が手を繋いでいるのを見て言ったのだろう。
うぜぇ……
「別に、僕から手を繋いだわけじゃないし……」
「へぇー? じゃあ、モモカちゃんの方から手を出したんだぁ~♪」
「うぅ……」
姉にそう言われて、彼女が照れたように顔を染めて下を向いた。
いや……でも、キミが手を先に繋いで来たのは事実だからね?
しかも、恋人繋ぎだし……
まぁ、だけど――
「ただ、僕にも拒否する理由が無かっただけだよ」
「はぅ……」
「ヒュ~♪」
……なんだよ。
何か言いたいことがあるなら、言えばいいじゃないか……。
「別にー♪ お姉ちゃんは何も言ってませんよー? あ! もしかしたら、猫ちゃんが何か言ったんじゃないかな? 猫ちゃんもそう思うよね~♪」
「ミャー」
「ほら! おめでとう♪ って祝福しているよ!」
子猫がそんなこというわけ無いだろ……
てか、その鳴き声は飯の催促だな。
姉の奴……もしかして、僕達が帰って来るまで子猫の世話もしないで寝ていたな?
「あ! じゃあ、二人が帰って来たしアタシはそろそろ社宅に一度帰ろうかな~……」
すると、姉は僕の視線の意味に気が付いたのか突然慌てる用に帰り支度を始めた。
そんな姉を心配して、彼女が声をかける。
「お姉さんは家を追い出されてここに来たんですよね?」
「うん、そうだね!」
うん、胸を張って応えることじゃないな。
「じゃあ、帰るって……何処に行くんですか?」
「うーん、追い出された社宅の引き渡しもあるし、新しい家も探さないから、結構やらないといけないことがあるんだよね」
まぁ、社宅を追い出されたって言ってたからマジで何も手続きとかしてないんだろうな。
「そのまま帰って来なくていいぞ」
「それは、お姉ちゃんがいるとお邪魔だから……?」
「……ち、違う!」
「はぅ……」
すると、彼女は赤くなった顔を隠すかのように白いマフラーに顔を埋めた。
そんな僕と彼女の反応を見ると満足したかのように姉は笑いながら言った。
「まぁ、今日は友達の家に泊まることにするから、こっちには帰って来ないよ♪」
そうか……なら、安心だ。
いや、何が『安心』とは言わないけどね……?
「あ、その前にモモカちゃん。一つ良いかな?」
「は、はい……」
すると、姉は彼女に何か一言だけ耳打ちを残した。
「――――なさい」
「え……?」
そして、姉は玄関へ向かうと満足したように僕の家から出て行った。
「じゃあね! サトルちゃん、女の子には優しくしてあげるんだよ~♪」
「良いからささっと出て行け!」
まったく、よよ、余計なお世話だぞい!
てか、マジで嵐のような姉だったな……。
「さて、残る問題は……」
「ミャー!」
とりあえず、コイツのゴハンでも用意するか……
てか、何でこの子猫は彼女と姉には懐いているのに、僕にだけは懐いてないんだよ……。
「そう言えば、桜井さん」
「は、はい! 何でしょうか……?」
「さっき、姉に何って言われたの?」
「え、あ、ななんでもないです……」
どうやら、この返事は聞いても無駄そうだ。




