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第18話『崩壊家族』


 結局、高校受験も失敗したわたしは普通の高校にしか行けなかった。



 高校は最初は通っていたけど、二年生になるころには行かなくなっていた。


 そして、その頃には、わたしの家族はバラバラになっていた。

 パパは単身赴任が決まって家には年に数回しか帰って来なくなった。


 息苦しさはどんどん強くなっていった。



 そして、その頃から、ママはわたしに何も言わなくなった。



 今まで手を出してない漫画を買っても何も言わないし、ママが嫌がっていたギターを始めても何も言ってこない。


 唐突に家を出て数日帰らなくても何も言われなかった。

 まるで、この家に娘がいないように、わたしを扱った。

 娘なんていない……ママが幸せな家庭がそこにはあった。


 わたしが良い子じゃないから?


ママの言う『ふつう』になれなかったから?


 ……結局、わたしは『ふつう以下(失敗作)』なの?


 わたしは、いつもどおり『良い子』でいたのに、何でわたしは『ふつう』になれないの?

 何で、みんなはわたしを『ヘンな子』っていうの? 


 わたしは『ふつう』が当たり前だと思っていた……でも、そのわたしは『ふつう以下(失敗作)』だった。



 ママはわたしを《良い子》だって言っていたのに――



 もう、わたしはママのいう『良い子』にはなれない。


 学校にも行ってないから、先生の良い子にもなれない。

 家庭教師もいなくなった。パパも単身赴任でいなくなった。ともだちもいなくなった。

 まともな時間に家から出ないから、近所のおばさんも商店街のおじいさんも会わなくなった。


 いつもどおり、みんなのいう『良い子』を演じていた『わたし』はいなくなっていた。


 もうわたしには誰もいない。誰かのために『良い子』でいる必要がない。


 いつもどおり、いつもいつも誰かの『良い子』でいる必要がない。

必要が……なきゃいけなかったのに、良い子でいて良い子でいるのが良い子だったのに、わたしはわたしはわたし……ワタシは……



『桃ちゃんは良い子だから』



 ――なのに、思い返したら、ママが最後にそう言ってくれたのは『いつ』だっただろうか?


 それだけが、わたしを認めてくれるママの言葉だったのに……




 ……なら、この『わたし(失敗作)』はなんのために生きているの?




 考えるたびに息が苦しくなってくる……。



 気付いたら、わたしは久しぶりの学校へ向かっていた。


 もう、しばらく行ってなかったのに何故か『ふつう』の女の子みたい通学路の土部沿いを歩いていた。



 その日は雨だった



 きっかけは無かった。


 ただ、もう生きる(良い子でいる)理由は無いと思った。


 気付いたら川を眺めていた。



 生きたい(良い子でいる)理由より、死にたい(良い子じゃない)理由の方が多かった。



 生きている(良い子じゃない)のがなんか嫌で、何となく生きる(良い子じゃない)のが嫌だった。


 自分の人生を全て無くして《悪い子に》、全て壊したい《なりたい》と思った。



 自分が(普通なのが)嫌いだ。


 未来が(『ふつう』が)嫌いだ。



 だから、死のうと思った。



 その日にしようと思ったのに特に理由は無かった。


 ただ、雨が降っていた。


 それだけ……

 雨も嫌いだ。何もかもが嫌でこのまま流されればいいと思った。



『ニャー』



 その時、声が聞えた。


 今から死のうと思っている人間の前に何でこんなものが現れるんだろう?

 わたしはどうしたらいいんだろう……?


 

 その瞬間、ふと思った。



 この子は生きようとして鳴いているんだと――



 ……でも、ワタシは?



 気付いたら、わたしはその子を抱きしめていた。




 河川敷に聞こえる『泣き声』は二つになっていた。





「それで、猫ちゃんを抱いて困っていたら安達くんに拾われたんです」

「ふーん、なるほどね……」



 彼女が死のうとしていた理由はなんとなく分かった。

 まぁ、言いたいことはいろいろあるが、


 とりあず、一つ謎なのは……



「何で、僕は桜井さんに膝枕されているの?」



 ……そう、現在進行形で僕は彼女の膝枕の上で寝かされてされているのである。


 いや、本当になんで僕はバブりながらこの話を聞かされているんだ?



「それはですね……」

「それは……?」



 すると、彼女は笑顔でこう言った。



「安達くんがいい子だからです♪」



 この話を聞かされた後だと、その言葉めっちゃ重いな……。





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