第11話『バス停と待ち合わせ』
彼女との待ち合わせ場所はとあるバス停前だった。
「待ち合わせ場所、着いたよ……っと」
バスなんて普段は使わないから、少しだけ来るのに迷ってしまったが、今居場所と共にメッセージを送ったので合流はできるだろう。
すると、すぐに彼女からのメッセージが返って来た。
その内容は――
『そこ、一個前のバス停です』
『待ち合わせ場所違います』
「嘘だろっ!?」
バス停の看板を見ると『深奥山前』と書かれている。でも、メッセージの待ち合わせ場所は……
驚いて彼女のメッセージを読み返してみると――
「『深奥山《《バス停の前》》で待ち合わせ』だった……」
なんてこった! どうやらこのバス停の次が待ち合わせ場所のバス停だったらしい……。
なんて、ややこしいんだ!?
「ゴメン! 次のバズで向かうから……」
僕が急いで謝罪のメッセージを送ると、直ぐに彼女も返事のメッセージが返ってきた。
『そこなら、近いんで迎えにいきます』
『だから、そこで待っててください』
遠回しに『そこから動くな!』と言われた気がする。
なんかちょっと怒ってない……?
「仕方ない……大人しくここで待つか……」
しかし、女の子とこう言うやり取りしているって、ソワソワするな……。
「なんか……ちょっと、デートの待ち合わせっぽいよな……」
そんなバカみたいなことを考えていると、数分ほどして、向かい側の道路から白いマフラーに、ゆるいパーカーと丈の長いスカート姿の女の子が僕を見て手を振りながらやって来た。
彼女だ!
因みに、白いマフラーは彼女の標準装備なのだろうか?
「こ、こんにちは……」
「あ、こんにちは……」
電話の時もそうだけど、何故か最初は挨拶した後に若干の間が開いてしまうと言うか、お互いに相手の顔色を伺ってしまうんだよな……。
怒ってなくて良かった……。
すると、彼女が突然甘えるように僕に抱き着いて来た。
「会いたかった……です」
「お、おう……」
えーと、まだ、お昼前だから他に人がいないからいいけど、外で抱き着くのはいかがなものなのかと……いやいや、人がいないからって別に良くは無いか?
そんなふうに、僕が戸惑っていると、彼女は抱き着く力を強めながら僕の懐に猫みたいに頭をこすりつけながら甘えるような声でつぶやいた。
「会いに来てくれて、嬉しいです……」
ヤバイ……このままだと、何がとは言わないがお外ではしていいイチャイチャの限界を超えてしまいそうになっている気がする!
そう思い僕は彼女の肩に手を置き無理矢理に抱き着くのを止めさせた。
「ちょ、ちょっと、待ってくれる!」
「……ダメですか?」
いや、ダメと言うか……ね?
「まだ外だから……」
「……わかりました」
――てか、外じゃなかったら、ボクはどうするつもりだったんだぁぁあああああああああああ!!
それと、彼女は何が分かったんだぁあああああああああああああ!?
そもそも、この状況は何なんだろう? 別に、僕達は付き合っているわけでもなければただの知り合いだ。
だというのに彼女は昨日からやけにガードがゆるい。
もしかして、これは全て何かの罠で、このまま彼女に家に言ったら別の男が出てきて――なんて展開で騙されるのではないか?
……マジで、その可能性もあるよな。
「あ、あの……」
「何かな?」
それでも、彼女は僕に甘えるようにこう言った。
「手……繋ぎたい……です」
――もう、騙されててもいいや……!!!
「えっと、……いいですか?」
「ああ、うん……いいよ……」
そして、手を繋いだ
……手のひらが熱い。
前も思ったけど彼女の身体は思った以上に熱を帯びている。
その熱が本当に彼女がうれしと思っている証拠のように思ってしまうのは僕がバカだからか?
それとも、僕の手がただ冷たいだけなのだろうか。
「ふへへ」
「……」
そのまま、僕は彼女の手にひかれ先導されるままに歩き始めた。
「幸せです……」
「死んだりしない?」
「今は大丈夫す」
「そうなんだ……」
今はってなんだよ……
「この辺はあんまり来ないんですか?」
「そうだね。住宅街だけど、坂道が多いから歩きではあんまり来たこと無いかな」
「そうなんですか……」
まぁ、住宅街という割には一軒家が多いし、バス名でも分かる通り山道なので、車かバスくらいしか移動手段がない道だからな。
「だから、こういう場所に家を持っている人って、土地持ちだからお金持ちだよね」
「そうなんですね……」
だからこそ、僕は気付くべきだったのかもしれない――
「ここが、わたしの家です」
「…………」
この近くに住んでいる彼女も《《その》》一人なのだと……
「……安達くん?」
「…………はぁ?」
紹介された彼女の家は、庭付き一戸建ての……
立派な一軒家《お金持ちの家》だった。




