47.
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
体が戻るのに、三日かかった。
ライナルトに言われた通り、トーコは二日間、診察室に出なかった。ミリアが「ちゃんと休んでいますか」と一時間おきに確認しに来た。ガルドが「うるさい」と言って、代わりに確認に来た。
三日目の朝、トーコは診察室に戻った。
「先生、まだ休んでいていいですよ」
「大丈夫です」
「でも」
「患者がいます」
ミリアが「やっぱり先生だ……」と言いながら、記録を持ってきた。
◇
夕方、ライナルトが来た。
健康診断の予定ではなかった。
「様子を見に来た」
「ありがとうございます。もう大丈夫です」
「顔色は戻っている」
「休みました」
「そうか」
ライナルトが診察室の椅子に座り、トーコを見た。
少し、間があった。
「一つ、聞いていいか」
「どうぞ」
「手首の内側を、見せてもらえるか」
トーコが少し目を動かした。
「手首ですか」
「ああ」
トーコが、袖を少し上げた。
手首の内側に、薄い紋様がある。成人の儀の後、ひっそりと浮かんだ紋様だ。ずっとそこにある。誰も気にしていなかった。
ライナルトが、それを見た。
しばらく、黙っていた。
「……見えていたのですか」
「ああ」
「いつから」
「最初から気になっていた。あの日、砦で初めて会ったとき。しかし確認する機会がなかった」
トーコが、自分の手首を見た。
「この紋章が、何か」
「金でも銀でも銅でもない」
ライナルトが、静かに言った。
「無色だ。透明な紋章だ」
「……そんな紋章があるんですか」
「伝説の中にある。この世界で、歴史に名を残した偉人たちの中に、透明な紋章を持つ者がいたという記録がある。魔法書の端に書いてある程度の、ほとんど誰も知らない話だが」
「伝説の偉人たちが」
「ただし」
ライナルトが続けた。
「魔力がなければ、紋章の力は使えない。透明な紋章を持っていても、魔力がゼロなら意味がない。だからその偉人たちは、別の方法で歴史に名を残した、とも書いてあった」
トーコが、しばらく自分の手首を見ていた。
「なるほど。私にも当てはまりますね」
「そうだな」
「魔力がないので、結局使えない紋章ということで」
「使えなくても、あなたがここまでやってきたのは変わらない」
「別に紋章のことは関係なく、やれることをやってきただけです」
「そうだな」
ライナルトが、少し口元を動かした。
「それが、あなたらしい」
「見えるんですか、こういう紋章が。普通の人には見えないのでは」
「人を見る目だけは、多少ある」
「多少、ですか」
「多少だ。ただ……あなたを初めて見たとき、この者は只者ではないと思った。今でもその判断は間違っていなかったと思っている」
トーコが少し、ライナルトを見た。
「辺境の医師ですよ、私は」
「ただの辺境の医師が、砦を救い、王妃を救い、街を変え、鬼族を助け、流行病を制した。この一年のことを、もう一度数えてみるといい」
「みなさんがいたから、できたことです」
「そうだが」
「そうですよ」
「……頑固だな」
「そこだけは」
ライナルトが、深く息を吐いた。
「一つ、言っていいか」
「どうぞ」
「君は……私の救いの女神だ」
部屋が、静かになった。
トーコが、ライナルトを見た。
「……それは」
「この街に来てから、変わった。この辺境に来てから、変わった。君が来なければ、今のデッドエンドはなかった。私も、今の私ではなかった」
「大げさですよ」
「大げさではない」
「辺境伯が、そんなことを言うんですか」
「辺境伯だから言える。私には、この辺境が変わったのが見えている」
トーコは少し、視線を窓の外に向けた。
デッドエンドの夕暮れが、石畳を橙色に染めていた。
病院の灯りが、一つずつ点いていく。
「……救いの女神は、言いすぎです」
「そうか」
「ただの医師です」
「ただの、とは言わせない。それはもう何度も言った」
「言いましたね」
「また言う」
トーコが、少し笑った。
ライナルトが、それを見た。
「……笑ったな」
「変なことを言うから」
「笑ってくれてよかった」
「変ですよ」
「変でいい」
部屋が、また静かになった。
今度は、穏やかな静かさだった。
ライナルトが立ち上がった。
「また来る」
「どうぞ」
「健康診断以外でも」
「……お茶くらいは出せます」
「それでいい」
扉が開く前に、ライナルトが振り返った。
「紋章のことは、二人だけの話にしておく」
「はい」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
扉が閉まった。
トーコはしばらく、手首の内側を見た。
薄い透明の紋様が、夕暮れの光の中に、かすかに輝いていた。
伝説の偉人たちと、同じ紋章。
魔力がないから、使えない。
——関係ない。
トーコは袖を下ろした。
魔力がなくても、手術はできる。血液検査はできる。患者に向き合える。
これからもやれることをやるだけだ。
それだけだ。
シルフィが肩の上で「きゅ」と鳴いた。
魔力視に映るのは、満ち足りた翠の光だ。
——わかってる、と言っている気がした。
「ええ」
トーコは次のカルテを手に取った。
デッドエンドの夜が、静かに始まっていた。
——第一章 了——
【※読者の皆様へ、大切なお知らせ】
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
トーコたちの物語は、第1章がこれにて完結となります。
以降の続きを執筆するかどうかは、本当にまだ何も決まっていないので、一度キリのいいここで完結設定とさせてください。
(数日後、こちらのページで『続編の有無』をお知らせするので、ブックマーク登録は外さずにそのままでお願いします!)
作者の今の正直な気持ちを言いますと……どうにかして、この作品で『日間総合1位』を取りたい……っ。
そしておそらく、第1章を完結した『今日この日』が、本作における『最後のチャンス』です……っ。
「第2章が、続きが読みたい!」
「第1章面白かった! 続きの執筆もよろしく!」
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最後になりますが、ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
願わくば、また2章で会えることを楽しみにしております!




