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400年後、迎えに来た龍王を私は覚えていない 〜男装騎士団長は記憶喪失の龍の巫女でした〜  作者: 玖条 レイナ
本編

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第五十五話 城を守る者

「はぁ!? 何言ってんだよ!

 アレス! お前、オレの事信用してないのか!?」


「そうではない――」


「エリス。お前は自分の兵を持たない――。

 それに、飛龍を持たないお前がどうやって出撃するんだ?」


 ファイに正論を突きつけられ、エリスは一瞬怯む。


「変異種なんて、別にオレ一人で十分対応できる!

 それに、走っていけば――!」


「走って行かれてはもう都市は壊滅しているだろう――」


 ファイはため息混じりに頭を横にふった。 


「エリス――。

 今回は俺、一人で行く」


「アレス!」


「……今まで、変異種が同時に別の場所に出現することなどなかった。

 これは、偶然とは考えにくい――」


「確かに、出現場所が六ヶ所ってのもなんか怪しいよね?

 まるで俺たち五天星(アステリズム)とエリスちゃんを誘い出してるみたいだ」


「……メラン卿」


「もしさ、これが誰かが意図的に行ってるんなら、その目的は何なのかな?」


 リコの発言に口を開いたのは、サトゥルだった。

 

「…………一番怪しいのはエリス嬢だろうな」


「ブロイン卿……」


「エリス嬢はつい先日まで狙われていた。

 しかも、敵はまだどこかに潜んでいるのだろう?」


「……なるほどね。さっきエリスちゃんのアンクレットが盗まれたって話も聞いたよ――」


「つまり、敵の狙いはヴァイオレット・レイスって事かよ!?

 チッ! またお前か!!」


「お、オレだって好きで狙われてるワケじゃないぞ!

 それに、たまたま偶然が重なっただけで、別に狙いがオレとは限らないだろ!?」


(“アウレウス・コア”の盗難と、“カイ”は関係ないはずだ――!)


(たぶん……、変異種が同時多発した原因は“アウレウス・コア”の盗難にある――)


(カイは“アウレウス・コア”の事なんて、知ってるはずがない!)


「まあ、真の目的は分からないが、用心に越したことはない」


「だから今回は――お前は城に残れ」


「……アレス――!」


 エリスは抗議をしようとアレスへ一歩踏み出した。


 その瞬間――

 

 アレスの長い指が、エリスの顎をそっと持ち上げた。


「エリス――。

 なにも俺は、お前に“戦うな”とは言っていない」


「……くっ!」


「城に残り、城を守れと言っているんだ――」


 エリスの菫色の瞳が揺れる。


「城にはあのソラリスの王女も滞在している。

 ……癪だが、他国の王女を蔑ろにもできまい」


「うっ……。それは、そうだけど……」


「それと、今回はディアナ(姉上)をお前の護衛につける」


「はぁぁぁぁ!! ディアナお義姉様を護衛だって!?

 オレがお義姉様の護衛の間違いだろ!?」


「……エリス。ディアナはお前より、いや五天星(私たち)より強いぞ――」


「えっ……?」


「そっか! エリスちゃんは知らないかぁ〜。

 ディアナはさ、ルクサリス建国以前は俺とファイと三人でよく戦場に行ってたものさ!」


「ディアナ様のあ(・)の(・)お力を使われたら、僕たちが束になっても敵わないよね!」


「……何があろうと、やはり『白』の力は伊達ではない――」


「……けっ! あの力さえなければ、余裕で勝てるのによっ」


「…………………………」


「分かったか、エリス。

 ――姉上は、ああ見てて頼りにはなる。

 ただし、面白がりさえしなければ……な――」



✕✕✕


 出撃準備を終えた五天星(アステリズム)の部隊が、外庭に整然と並ぶ。


「リーベル・メラン。『黒』の部隊、出撃準備完了!」

 

「リュケイオス・ルベウス。『赤』の部隊、いつでもいいぜ!」


「リコ・ヴェルダ。『緑』の部隊、準備出来たよ!」

 

「サトゥル・ブロイン。『茶』の部隊、整った」


「ファイ・キュアノエイデス。『青』の部隊、問題ない」


「皇帝陛下直属部隊、出撃準備完了いたしました!」


「…………あぁ。では、各員、出撃せよ――!」


 アレスの咆哮と共に、各部隊は一斉に空に飛び立つ。


 エリスはディアナと共に、飛び立つ龍たちを眺めていた。


(本当はオレもあそこにいるはずなのに……)


 エリスは静かに唇を噛み締める。


「…………アレスと一緒に行きたかったのかい?」


「ま、まさか! オレは『皇帝の剣』としての役割を果たしたいだけだ!」


「…………そう。だったら城に残るのも十分に役割を果たしていると思わないかい?」


「…………それは…………、分かってる」


(城の防衛が一番大事なのは分かってる!)


(……“アウレウス・コア”がなくなって、どこで何が起きてもおかしくはないんだから……!)


「……分かっているならいいんだけどね。

 でも、今回、ボクをエリスの護衛に付けるとは――。

 アレスも相当焦っていると見えるね」


「ディアナお義姉様……」


 ディアナはいつもの白銀のドレスではなく、白を基調としたパンツスタイルの衣装を身につけていた。


 白銀の長い髪は高い位置で一本結びにしており、腰には細い剣が下げられている。


「……こんな格好をしたのは何百年ぶりだろうね?」


 黒い戦闘服の軍服に着替えたエリスと、白に金の装飾が施された衣装を纏うディアナ。


「エリスはアレスとお揃いの軍服なんだろう? ボクもファイとお揃いの戦闘服を仕立てておくべきだったよ」


 ディアナの軽口に、エリスは眉を寄せた。


「ディアナには、ずっとドレスを着ていて欲しかったがな――」 


 その時――

 聞き覚えのある声が聞こえていた。


「ファイ」


 ディアナは琥珀色の瞳を細める。


「なんだい? ボクの晴(・)れ(・)姿(・)を見に来たのかい?」


「……ふっ。そういう事にしておこう」


「ふふふ」   


 ディアナは楽しげに笑った。


「エリス――」


 ディアナとファイのやり取りを眺めていると、今度は自分を呼ぶ声が聞こえる。


「――アレス――」


 エリスは菫色の瞳で、声の主を見つめた。


「……エリス。城は任せる――」


「……分かってるよ」


 数秒、見つめ合う二人。


「……行ってくる」


「あぁ、城は任せろ――」


 


「……ファイ。少し屈んでくれないかい?」   


「…………こうか?」


 ――ちゅ。

 

 ディアナはファイの頬にそっと口づける。


「気をつけて――」


「……ディアナ」


「必ず、ボクの元に帰っておいで――」


「あぁ、仰せのままに――」


 ディアナは満足げに琥珀色の瞳を細める。


 そして――


「エリスはしないのかい?」


「はぁぁぁ!? するわけないだろ!!」


 クルリとエリスの方に振り返り、ディアナは悪戯っぽく微笑んだ。


「………………そうか」


 アレスは呟き、エリスとの距離を詰める。


「な、なんだよ! 泣いて頼まれたってそんなんするわけ――」


 アレスはエリスの前で片膝を折る。


 そして、エリスの右手を取ると、手の甲に口づけた。


「……俺はお前を信頼している。

 俺の剣として、役目を果たせ――」


「――――ッ!!?」


 ファイとディアナは、顔を見合わせる。


「……なぁんだ。やっぱりするんじゃないか――」 

 

 顔を真っ赤に染め、フリーズするエリスと、愉悦の表情を浮かべるディアナ。


 アレスとファイは踵を返し、それぞれの龍と共に空へ舞い上がった。


「あ、あ、アレスのバカァァァァァァ!!」


 エリスの叫びに、ディアナはお腹を抱えて爆笑していた。



 白龍と青龍は主を乗せ、それぞれの部隊の先頭へと戻っていく。


「……そろそろボクたちも城へ戻ろうか」


「あぁ……」


「アレスが心配なのは分かるけど、アレスは龍王だ。

 だから――」


 ドゴォォォォン――!


 ディアナの言葉を遮ったのは、地面を揺らす轟音。


「なんだッ!?」


 エリスは音の方角――城の一角を振り返る。


 ディアナの琥珀色の瞳がギラリと光る。


「……正門だ」


 エリスは反射的に腰の剣へ手を伸ばした。




最後まで読んでいただきありがとうございます!


「俺はお前を信頼している。俺の剣として、役目を果たせ――」


出撃直前、アレスがエリスの手の甲に捧げた誓いの言葉とキス!


顔を真っ赤にして叫ぶエリスを残し、『五天星』が各地へと旅立った直後、手薄になったアルヴァニア城の正門を突如として襲った大爆発――!!


アレスたちが不在の隙を狙ったかのように爆発音が響き渡る!


絶望的な状況の中、手薄になった城を守るため、エリスとディアナが立ち上がる――!


【次回予告:第56話「白銀の戦乙女」】


「……城の精鋭たちは全員遠征に行ってしまったからね。狙うなら、絶好の機会だよ――」


正門を破り、城内へとなだれ込んでくる変異種の群れ。


逃げ惑う兵士たちを背に、剣を抜いたエリスの隣で、アレスの姉・ディアナが静かに歩み出る。


今まで隠されていたディアナの真の力が、ついにベールを脱ぐ――!?


さらに、混迷を極める戦場の渦中、二人の前に現れた“不穏な侵入者”とは……?


次回、第56話! 試される絆と、手薄な城に忍び寄る新たなる脅威。どうぞお楽しみに!


「アレスの手の甲へのキスが甘すぎる!」「お留守番組の戦いがどうなるのか気になりすぎる!」と思った方は、ぜひページ下部の【ブックマーク】や【☆☆☆☆☆(評価)】をポチッと押して応援していただけるとめちゃくちゃ励みになります!


次回の更新もどうぞお楽しみに!

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