↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
400年後、迎えに来た龍王を私は覚えていない 〜男装騎士団長は記憶喪失の龍の巫女でした〜  作者: 玖条 レイナ
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/69

第五十三話 アウレウス・コア

「アルヴァニア城にこんなところがあったんだな――」

 

 感心したようなエリスの声が、地下の静寂に溶けていく。

 

 そこはアルヴァニア城の地下最深部。

 誰一人として近づくことを許されない、建国以来守られ続けてきた禁域だった。

 

 アレスは足を止め、目の前の空間を静かに見据える。


「……どうした? 行かないのか?」


 エリスは不思議そうに首を傾けた。


「あ(・)れ(・)が『封印の間』の扉なんだろう?」


「………………見えるのか?」


 アレスの静かな問い。

 ファイの視線がエリスに移る。


「はぁ? バカにしてんのか??

 あの金色の扉がそ(・)う(・)なんだろ!?」


「………………どこに見える?」


「何言ってんだ? 目の前にあるだろ?」

 

 エリスが指さす方向を、アレスとファイが見据える。

 二人には扉の『気配』しか感じられず、その姿を直視することはできない。


「……このまま、正面にあるんだな?」


 今度はファイが問いかける。

 

「だからそう言ってるだろ! なんなんだよ!

 二人してオレをバカにしてんのか!?」


「……まさか。確認しているだけだ――。

 アレス」


「あぁ。行くぞ……」


 そう言うと、アレスとファイは歩き出す。


「……何なんだ?」


 エリスも怪訝な表情で二人の後について行く。


 数歩歩くと、透明の、見えない何(・)か(・)に触れた。


(……これって、結界か――?)


 エリスが結界を通り抜けると、黄金の扉の前でアレスとファイが待っていた。


「……やはりか」


「……あぁ」 


 アレスとファイが口を開く。


「……何がやっぱりなんだよ」


 エリスは不遜な態度で二人に問いかける。


「……エリス。そこに結界が張られていたのは分かったな?」


「え? あぁ、あの幕みたいなやつだろ?」


 あっけらかんと言い放つエリスに、アレスとファイは頷き合った。 

 

「ああ。この『封印の間』を誰にも暴かれないようにするための結界だ――」


「………………まぁ、『封印の間』だから結界くらいはあるんだろうな、普通に」


 エリスは当然の事のように呟く。


「エリス。

 ……実は、この結界を通り抜ける事が出来る者は、ごく一部の龍魔族に限られているのだ」


「ん?」 


 アレスの言葉にエリスは首を傾げた。


(ごく一部の龍(・)魔(・)族(・)……?) 


「――アレス。あとは私から話そう」


「……まかせる」


 アレスの許可を得たファイは、エリスに向き合う。


「エリス。お前は『六星龍(ヘクスドラゴン)』という呼び名に聞き覚えはあるか?」  


「へくす……ドラゴン……? なんだそれ?」


「やはり知らぬか……。

 では、龍の階級は分かるな?」   


「ああ! それなら前リコに教えてもらったぞ!

 たしか……『黄金、最上級の白・青、上級の黒・赤、下級の緑・茶。そして、例外の紫』。だよな!」


 エリスはドヤ顔でファイを見る。


「正解だ」


 ファイは頷く。


「で? その階級とヘクスドラゴン? はどういう関係なんだ?」


「――龍の階級は、黄金龍ジュピテル・アウレウス様の血(・)の濃さによって決まっている」


「黄金、龍……? 血(・)の濃さ??」


 エリスはますますワケが分からないと言いたげに、首を傾げた。


「六星龍(ヘクスドラゴン)は私(・)た(・)ち(・)のようにジュピテル様の血を濃く受け継ぐ龍魔族最高位の一族の総称だ」


「………………?」  


「その六星龍(ヘクスドラゴン)の中でも最も血を濃く受け継いだ一族――。

 つまり、最上級階級の『白』と『青』、あるいはそれに連なる者でなければ、この結界は通れない。と言うことだ――」


「はぁぁぁぁ!? じゃあ人(・)間(・)のオレが通れるワケないじゃないか!」


「……………………」


 ファイとアレスはお互いにアイコンタクトを送り合う。


「だが、エリス。実際にお前はこの結界に拒まれる事なく、難なく越えてきた」


「――っ!!」


(確かに、さっき結界みたいなのは通ってきたけど…………!)


「で、でもオレ……、龍魔族じゃ――」 


「…………エリス。お前の身体には、吸血によって俺(・)の(・)魔(・)力(・)が刻まれている」


 ファイの説明を引き継ぐように、アレスはエリスへ近づく。

 そして、長い指先がエリスの耳元――吸血痕をなぞり上げた。


「――っ!? ア、アレス!?」


 ゾクッと背筋を跳ね上がらせるエリスをよそに、アレスは至って真面目な顔で耳元に息を吹きかけるように囁いた。

 

「――その影響で、人間であるお前から、俺の『白』の魔力を感じ、結界が反応した可能性はある」


「な、なるほど……?

 それなら確かに説明がつくか……」


 アレスの指先が、耳元から首筋の吸血痕をなぞる。

 エリスは顔を真っ赤に染め上げながら、安堵なのか困惑なのか分からないため息をついた。


「――アレス、エリス。じゃれてないでそろそろ中に行くぞ」


 ファイの声。


「じゃ、じゃれてなんかない!!」


 エリスが即座に反応した。


 アレスは名残惜しそうにエリスの首筋から手を離すと、黄金の扉の前まで移動する。


「――これより、開門の儀を執り行う」


 静かに、淡々と告げる声。

 アレスは腰の剣を抜き、その刃に指先を当てる。


 その瞬間――


 ――ガコン 。


 重々しい音を立てて、扉がゆっくり開かれていった。


「……凄いな! その剣が鍵だったのか?」


 ひょこっとエリスがアレスの手元を覗き込む。


「………………いや。

 俺はまだ、何も――」


(――何も、していない……) 


「……アレス。扉が開かれた。中に急ぐぞ」


「――ああ」


 アレスはエリスを振り返る。


「行くぞ、エリス」


「おう!」




 扉を潜り抜けると、そこは壁一面に何か紋様が彫られている通路があった。


「……暗いな……」


 エリスが呟く。


「今、灯りを点そう……」


 ファイは手をかざす。


 すると――

 壁一面の紋様が黄金色に光り始めた。


「お! ありがとな! ファイ」


「あ、あぁ……」


(私は、ま(・)だ(・)何もしていない――)


 ファイは前を歩くアレスに一歩近づく。


 アレスも顎に手を当てて、ファイと同じ顔をしていた。


「…………アレス。私は何もしていない――」


「……だろうな。

 俺も、血を流していない――」


「………………この壁の輝きもそうだが、いつもと様子が違いすぎる」


「ああ、分かっている」


 アレスとファイは、黄金色にピカピカと光り輝く壁に夢中になっているエリスを見る。


「…………つまり……」


「…………おそらく、だがな――」


 二人は静かに頷き合う。


「……エリス。いつまで壁に見惚れている。

 ――先に進むぞ」


「あっ、すまないっ!

 あまりにも綺麗な紋様だったからつい……」


 エリスは先に進むアレスとファイの後に続いた。


 

 しばらく歩くと、広い空間に出た。

 空間の中央には白い石造りの祭壇が置かれていた。


「……あの祭壇に、このアルヴァニア城が密かに守ってきた“モノ”がある」


「…………それって、オレが見てもいいモノなのか?」


「無事にあれば……な……」


「……無事にって……。

 と、とにかく近づこうぜ!」


 アレスとファイは顔を見合わせる。


「……無事にあることを祈ろう――」


 アレスの声は静かだった。 だが、その拳は知らぬ間に強く握り締められていた。


「おう!」


 元気よく返事をするエリス。


 三人が祭壇に近づくと、アレスとファイの顔色が曇っていく。

   

「……エリス。どうやらお前に、“アウレウス・コア”を見せることは出来ないらしいな」


「え?」 


 エリスは祭壇へ視線を向ける。


「……“アウレウス・コア”が紛失している――」 

 

 そこにあるはずだった台座には――

 

 何も、なかった。      




最後まで読んでいただきありがとうございます!


「……“アウレウス・コア”が紛失している――」


建国以来、最高位の龍魔族しか立ち入ることを許されないはずの『封印の間』。


そこで彼らを待ち受けていたのは、まさかのルクサリスの命運を握る秘宝の消失という、あまりにも衝撃的な光景でした……!


なぜ人間であるエリスが何のおとがめもなく結界を通り抜けることができたのか。


なぜアレスの血を捧げる前に扉が開き、壁の紋様が黄金に輝き始めたのか……。


疑問と謎が深まる中、盗まれた秘宝の影響は、早くもルクサリス全土へと波及し始めてしまい――!?


【次回予告:第54話「六つの凶報」】


「アウレウス・コア」盗難の裏に潜む、巧妙な陽動と不穏な「内通者」の影。


事件の真相を追うアレスたちの元へ、突如として飛び込んでくる悪夢のような報せ。


「東の都市、南部農村地、西の街道、北の砦……!?」


ルクサリス各地に同時多発的に現れた、計6箇所の『変異種』!


国家未曾有の危機に、皇帝アレスは自らを含む最高戦力『五天星(アステリズム)』の全面出撃を決意する。


だが、迫り来る混沌の中、アレスがエリスに下した命令は――あまりにも思いがけないものだった。


次回、第54話! 動き出す災厄と、引き裂かれる二人の役目。どうぞお楽しみに!


「コア紛失の真相が気になる!」「アレスのエリスへの命令が気になる!!」と思った方は、ぜひページ下部の【ブックマーク】や【☆☆☆☆☆(評価)】をポチッと押して応援していただけるとめちゃくちゃ励みになります!


次回の更新もどうぞお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。