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400年後、迎えに来た龍王を私は覚えていない 〜男装騎士団長は記憶喪失の龍の巫女でした〜  作者: 玖条 レイナ
本編

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第四十八話 性格の悪い女の選び方

 時はエリスがアレスに口づけたところまで遡る――。


✕✕✕


「ファイ! 今の見たかい?」 


 社交界の主催者席。

 会場全体が見渡せる回廊(バルコニー)にて。


 ディアナは琥珀色の目をうっとりさせてエリスとアレスを見ていた。


「ファイ。エリスが接吻した(やった)よ――」


 琥珀色の瞳は、これまで見たことがないほど、愉悦を滲ませていた。


「ああ。見た――」


 ファイは浅葱色の瞳を閉じ、短く答える。


「ふふふふふ、ははははは、あははははははは!!」


 ディアナはお腹を抱えて笑いながら回廊(バルコニー)をくるり、と回る。


「見たかい!? あのアレスの顔!!」

 

「あんなマヌケな顔、久しぶりに見たよ!」


「ひー!! 最高だ! 最高だよエリス!!」


「ボクの想像を軽く超えてくれる――」


「最高の玩具(義妹)じゃないか――!!」


 ディアナは最高級のワインを飲み干す。


「……ディアナ、ソラリス王国の第一王女をアレスに仕掛けたのはキミか?」


「ふふふ、人聞きの悪い――。

 仕掛けたんじゃない、頼まれたのさ」


 ディアナは琥珀色の瞳を細める。


「ソラリス王国は、アレス(皇帝陛下)と“お近づきになりたい”と言った――。

 だから、ボク主催の社交界に招待してあげただけさ」


 ディアナは空になったグラスにもう一度、ワインを注ぐ。


「ボクは、“きっかけ”をあげただけ。

 後は自分たちでどうするかだけど……」


「そのおかげで面白いものが見れた」


「こんなに面白いことをしてくれるんだったら、リーベルあたりと賭けをしてもよかったね」


「…………賭けの対象は?」


「…………もちろん、ボ(・)ク(・)自(・)身(・)さ」


「…………ディアナ――」


「冗談だよ、ファイ。

 それより、ボクたちの賭けはファイの勝ちさ――」


「エリスがボクの想定内の行動をすればボクの勝ち。

 想定外の行動をすればファイの勝ち――」


 ディアナの琥珀色と、ファイの浅葱色の瞳が互いを見つめる。


「……約束だ、ファイ――。

 今夜は、キミの好きにしていいよ……」          

 


✕✕✕ 

 

 ディアナほど性格の悪い女を私は知らない――。

 


 今だって新しい玩具(エリス)を試す為に他国の王女を使った。


 私の前で、親友(リーベル)の名を出した――。

 

 人の気も知らないで、楽しそうに――。

 ディアナ(彼女)は、エリスと共に、私の気持ちも弄んでいる――。

 


✕✕✕ 


 ディアナとファイ、それにリーベルは幼馴染だった。

 歳が近かった三人は、共に学び、遊び、切磋琢磨し成長していった。


 ディアナが年頃になると『番(つがい)』を求められるようになった。


 龍魔族の始祖であり、唯一王であった『黄金龍』ジュピテル・アウレウスの血を濃く受け継いだ一族。

 血の濃さによって、階級が分かれていた。


 最上級『白龍』のアルヴァス家、『青龍』のキュアノエイデス家。

 上級『黒龍』のメラン家、『赤龍』のルベウス家。

 下級『緑龍』のヴェルダ家、『茶龍』のブロイン家。


 この六つの龍家は、後に『六星龍(ヘクスドラゴン)』と総称される、龍魔族最高位の六家である。

 

 その中で最上級の階級を持つ『白龍』の姫。 


「ボクの伴侶はボクが決める」


 目の前の白銀の姫君は、琥珀色の瞳を愉しげに細め、ファイとリーベルに死の宣告にも等しい『問い』を投げかけてきた。


「もしも『世界』か『ボク』かを選ばなければいけなくなったら……キミたちはどちらを選ぶ?」


 ディアナの琥珀色の瞳が再度細められる。


「俺は……! ディアナを選ぶ!」


 真っ先に答えたのはリーベル。

 彼はディアナの前に跪き、墨色の瞳で彼女を見上げた。


「俺は、貴女を守るために剣を執った。

 たとえ世界が滅ぼうとも、俺は貴女を選ぶ。それが俺の誉れだから……」

 

(……哀れな男だ――)

 

 ……隣で騎士道精神を熱弁しているリーベルが、哀れでならなかった。

 こいつは、この女が今、我々の心臓を天秤にかけて遊んでいることにすら気づいていないのだ。



 リーベルの『回答』が終わり、ファイの番になった。


 ファイは浅葱色の冷徹な瞳でディアナを見据えた。

 

「……愚問だな。私は『世界』を選ぶ。

 お前が死んでも、世界が存続すれば、お前の意志は継がれる。お前が生きても、世界が滅びれば、お前の存在意義は消える。

 簡単な答えだ――」



 ファイの回答を聞き、ディアナの口角が上がった。


「リーベル、キミの気持ち、痛いほど伝わったよ」


 リーベルの墨色の瞳が希望を持って見開かれる。

 ――だが、次の言葉で絶望の底にたたきつけられた。


「……でも……、その答えはつ(・)ま(・)ら(・)な(・)い(・)」


 ディアナはファイに向き合う。


「ファイ。……合格だ。

 ボクを選ぶ男よりも、世界を選ぶ男の方が面(・)白(・)い(・)。

 今後も、ボクが世界の装置として機能し続けるよう、生涯支え続けろ」


 それは、決して逆らうことが出来ない命令だった――。


「……仰せのままに――」


 ファイはディアナに頭を垂れた。


✕✕✕


 ――あの日から、私の計算は狂い続けている。

 

 命令だから従っているのではない。

 世界を選ぶ私に、己のすべてを預けたこの女を、世界ごと愛してしまったのだ。


 

『今夜は、キミの好きにしていいよ……』


 ディアナの言葉がリフレインする。


「…………本当に、好きにしていいんだな?」


「おや? ボクがウソをついたことなんてなかっただろ?」


「…………ディアナ。キミはウ(・)ソ(・)はつかない」   


「ああ、ボクはウ(・)ソ(・)はつかないよ、ファイ」


「…………ならば、血を貰おう――」


「いいよ、ファイ。

 ――おいで――」  

 

  

(……性格が悪いのは、ディアナだけではないらしい)


(私も、ディアナの賭(・)け(・)を楽しんでいるのだから――) 




最後まで読んでいただきありがとうございます!


「命令だから従っているのではない。世界ごと彼女を愛してしまった」


今回は少し時を遡り、バルコニーで高笑いするディアナお義姉様と、その傍らに立つ『青龍』ファイのサイドストーリーをお届けしました!


「世界」か「ボク」か――。

熱血な回答をしたリーベルを「つまらない」と切り捨て、「世界を選ぶ」と冷徹に答えたファイを選ぶディアナ様……どこまでも性格が悪くて最高ですね(褒め言葉)。


そして主従であり、賭けの対象であり、歪で深く結ばれた【ファイ×ディアナ】の激重な愛……!

エリスとアレス様の甘い関係の裏で繰り広げられる六星龍の過去とドラマ、いかがだったでしょうか?

(ちなみに、絶望の底に叩きつけられた不憫なリーベルにも、どうか幸あれ……!笑)


【次回予告:第49話「口づけの代償」】


「……昨日のお返しだ……!」


社交界の翌朝、前夜の吸血と甘い記憶に顔を真っ赤にしながら起き上がったエリス。

幸せそうに眠るアレスの鼻を摘んでささやかな復讐を試みるも、皇帝陛下からの甘すぎる返り討ちに遭い大叫喚!?


さらに、昨日公衆の面前で交わした「口づけ」の政治的意味――自分が“未来の皇后候補”として周りから見られ始めたことに気づき、青ざめるエリス。


朝議に向かうと、そこにはなぜか怒り心頭の『あの男』が待っていて――?


「テメーのせいで散々な目に遭ったんだぞ! どう落とし前つけてくれるんだ!?」


社交界の裏で起きていたソラリス王女の大泣き惨事!

そして、逃げたアレスの代わりに王女の次なるターゲットにされてしまったのは――!?


次回、第49話! 甘い朝と賑やかな五天星の会議、そして忍び寄る事件の予感をお楽しみに!


「ファイ×ディアナの関係が深すぎる!」「ファイの愛が重くて最高!」「リーベル頑張れ…!」と思った方は、ぜひページ下部の【ブックマーク】や【☆☆☆☆☆(評価)】をポチッと押して応援していただけるとめちゃくちゃ励みになります!


次回の更新もどうぞお楽しみに!

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