檻
アルフレッド達が王都を蹂躙している間、ベルナデットは徐々に騒ぎが大きくなりつつある王都の中で、逃げ惑う民衆と逆走し、一人ある場所へと向かっていた。
「ここですか……」
到着したベルナデットの視線の先には、見上げるほどに大きな教会堂が建立されている。
宝石をちりばめたかのように綺麗な光を放っているそれは、王都は中央に存在しているセント・バーナシ大聖堂。
聖教会の本部とされている建物である。
どうやら中央の方までは騒ぎは起こっていないようで、周囲にはいつもと変わらぬ緩やかな空気が流れている。
やってきたベルナデットを見て不思議そうにしている者はいるが、見た目はエルフとそう変わらないからか、さして差別的な視線を受けることもなく聖堂へ近づいていく。
入り口には聖堂騎士と思しき男達が立っている。
アリアに付き従っていた者達と比べると、顔立ちから甘さが抜けきっていない。
聖堂騎士といっても、かなり実力の差の開きはあるのだろう。
「さて、それでは……いきますか」
ベルナデットは瞳を閉じてから、ぱんっと大きく柏手を打った。
すると同時に、巨大な大聖堂を覆い尽くす漆黒の球体が現れる。
超級闇魔法、暗庵の帳……あらゆる干渉を遮断するこの魔法が発動されたことで、中から逃げることは不可能となった。
ベルナデットがここにやってきた目的は、ミツルより命じられた魔道具輝くもの、天より堕ちの回収と聖教会の主要人物の確保のため。
必要な人物は、誰一人として取り逃すつもりはない。
「ディメンジョンゲート」
彼女が再びディメンジョンゲートを発動させると、そこから小隊規模のエルフ達が現れ、その後ろから一人の女性が顔を出す。
おずおずとやってきたのはミツルへ進言を行った、聖女アリアであった。
覚悟を決めたからか、彼女は自身の目から眼帯を取り外している。
「なっ……聖女アリア様!?」
「聖女様が、なぜここに!?」
「アリア、彼らは……」
「聖堂騎士です。大した情報も持っていませんし大聖堂勤めの人間は基本的にコネ採用ばかりですから」
アリアはそのまま近づいていくとにこりと笑みを浮かべ……そのまま手にした錫杖を振る。 カタンと音を鳴らし、杖の下部が外れてその内側に秘められていた刀身が露わになる。
仕込み杖から現れた剣が走る。
「なっ……」
「ば、馬鹿な、何を……っ?」
彼女は一刀の下に、男達を切り伏せてみせた。
軽く剣を振り血を飛ばして振り返ると、そこには返り血を浴びながら平然としている彼女の姿が映る。
「行きましょう、道中の道案内は私が致します」
「……わかりました。アン達は王都の魔力反応を探知して、事前の情報を下に重要人物達の捕縛を行いなさい。第二軍団が迫ってきています、時間はありませんよ」
「「「はっ!」」」
命令を受けたエルフ達はそのまま敬礼をすると、魔法を使い風景の中へと溶けていった。
ベルナデットはアリアの案内に従いながら、大聖堂の中へと入っていく。
急ぐ必要はない。この場所の中にいる者達は既に……檻の中に捕らえられているのだから。




