王都襲来
「わっはっは、我が一番乗りである!」
道中の散発的な抵抗を蹴散らしながら第二軍団軍団長、『唯我』のアルフレッドは王都の街並みを見上げていた。
街並みから煙が上がっているようなこともなく、他の軍団長達が来た形跡はない。
「とりあえず……食い破るかッ!」
アルフレッドはそのまま手にした剣を抜き放ち、一つのスキルを発動させた。
アクティブスキル、スラッシュ。
斬撃を強化するというただそれだけのスキルである。
だが彼が手ずから倒したドラゴンの牙より削り出した牙に、彼自身の圧倒的な膂力が組み合わされば……総鋼鉄製の門程度であれば、どれだけ分厚かろうが飴細工のようにずるりと落ちた。
「総員、突撃ィッ!」
アルフレッドの号令と共に、彼の背後に控えていた魔物達が駆けていく。
彼が軍団長を務める第二軍団は獣種達の魔物によって構成されている。
四足歩行の個体から二足歩行、更には空を翔る鳥型魔物に至るまで、多様な個体達が鳴き声を上げながら雪崩れ込んでゆく。
真っ白な体躯をした豹が、たてがみの代わりに炎が燃えているライオンが、彼と同じく期し甲冑に身を包んだ獣戦士達が、王都の中で破壊の限りを尽くす。
「うむ、壮観であるな」
これが混沌迷宮に喧嘩を売った者達の哀れな末路と思えば、当然のこと。
自分達の、そしてダンジョンマスターであるミツルのことを侮る者達は、滅んで然るべき存在だ。
「ふぅむ……?」
アルフレッドは魔物達が暴れ回る様子を見ながら、一人城壁の上に立ち内部の様子をジッと眺めていた。
事前にもし何かが起こるとすれば王都だと言われているが……今のところ異変は見られない。
此度の戦争は、アルフレッドにとっては戦いというより狩りに近かった。
無論、つまらないというわけではない。
狩りには狩りなりの面白さがある。
「これは……先を越されてしまいましたね」
ディメンジョンゲートを使い街へと転移してきたベルナデットが、アルフレッドの隣にん欄だ。
「うむ、我の勝ちだ」
「別に勝負はしていなかったように思いますが……たしかに負けは負けです。潔く認めざるを得ませんね」
ディメンジョンゲートは発動までに座標の指定や魔法陣の構築など、かなりの時間と魔力を必要とする。
それを自身が侵攻する領域の各街毎に、自軍を運べるほどの大きさで行わなければならないこと、そして途中から今後の統治のことを考えて殲滅ではなく占領に切り替えた第三軍団が第二軍団にわずかに遅れたのは、ある種当然かもしれない。
だがなぜワープを使っている自分達より、全力で走って移動している彼らの方が速いのだろうかと、ベルナデットはいまいち釈然としなかった。
「派手にやりすぎではありませんか? あまりやりすぎては今後の我らへの悪感情が……」
「我は雑魚がどう思おうがどうでもよい。我が気にするのは我らを脅かすほどの存在のみ。我らに届きうる強者を炙り出すには、やはりこれが一番手っ取り早い」
ミツルは彼らに自由裁量を認めている。
そのため侵攻のやり方は、それぞれ軍団長が好きなやり方で行われていた。
アルフレッドは速度を重視して鏖殺し、ベルナデットは今後の統治を思い降伏の余地を与え、そして今この場にいないであろうティアマトは人間達を甚振りながら楽しんでいることだろう。
「私達は聖教へ向かいます」
「うむ、その辺りは任せた。我はそういった人間の詳しい機微には疎いからな」
広い王都で網を広げるには手が足りないということで、二人は二手に分かれて各々が正解と思う動きを取ることにした。
アルフレッドはミツルに命じられた戦力のあぶり出しを至上命題とし王都にて圧殺を行うが、ベルナデットがすることを止めるつもりはない。
聖教会についての問題解決についてミツルが気にしていたのも事実、彼はミツルのために動く仲間を悪く思うほど狭量な男ではなかった。
「さぁて、出てくるも良し、出ないで狩りをするのも良し! 我はしばしこの祭りを楽しませてもらうとするか!」
各地から火が昇って煙がたちこめ、人間達の悲鳴があちこちから聞こえてくる。
狩りの楽しいところは餌に食らいつくその瞬間である。
獲物を手にかけた時の喜びは、辛くも勝利を収めた時とはまた別の感がある。
アルフレッドは自身もまたその楽しみを追求すべく、配下達と共に鳴り物入りで王都へと入るのであった……。




