いかにも
転移魔法陣を通ってきたセドリック達がやってきたのは、だだっ広い荒野であった。
そしてそこでは一体のアンデッドが、彼らを待ち受けていた。
「ほう……第三十三階層をクリアしてきましたか……」
その見た目は、ただのスケルトンに見える。
リッチなどと比べればはるかにみすぼらしいボロボロの黒の服。
手にしている杖は黒ずんで煤けており、見習い魔術師でももう少しはマシなものを使っていると思えるほどにひどいものだ。
(なんだ、こいつは……っ!?)
だがセドリックは、そのアンデッドが内包している魔力の異様さを肌で感じ取ることができた。
こうして同じ場所にいるだけで身体の芯がビリビリと痺れ、肌が泡立つ。
ここまで圧倒的な力の差を感じたのは、以前帝国の勇者をその目で見た時だけだった。
「だがいささか数が多いな……」
スケルトンが手にしている杖を高く掲げる。
黒ずんだ杖に埋め込まれている小さな宝玉が、ゆっくりとその輝きを増していく。
黒く輝く光が、エリア全域を包み込む。
「死の呪言」
黒い光が、舐めるようにセドリック達一軍の身体を通り過ぎていく。
――そしてセドリックと公爵を除いた五千名の兵士達が、全滅した。
「おや……二人しか残りませんでしたか。そういえば名乗りがまだでしたね。私は第九軍団軍団長のズモゴロフ。ミツル様より『究極』の二つ名をいただいております」
セドリックはあまりの衝撃に、目の前の魔物の言葉が入ってこなかった。
周囲にいる兵士達は皆、今の一瞬で絶命してしまった。
バタリバタリと、死んでしまった者達がそのまま地面に倒れていく。
セドリックはふぅ、とゆっくりと息を吐いた。
己の肺腑に溜まっている息を吐き出さなければ、諦念からため息をこぼしてしまいそうだったからだ。
「――いちかばちか、やるしかないッ!」
セドリックは即座に、己が放つ全力の一撃を放つ決意を固めた。
これが敵わなければ勝ち目はないという半ばやけっぱちにも似た思考ではあるが、咄嗟にその判断ができることこそ、彼が数多くの戦場を駆け抜けた歴戦の英雄であることを示している。
セドリックは複数の上位ジョブについている。
彼が持つ大剣はソードマスターの効果により感じる加重が軽減され、その剣閃は最適化される。
「仏陀斬りッ!」
大僧兵の固有スキルである仏陀斬りによってその剣には魔を滅する光の魔力が宿り、彼が持つ魔法僧の力により光の魔法剣の威力が上昇する。
アンデッドに対して特攻を持つ光属性の一撃を、幾重にもかけたスキルを使い強化して放たれる最高速の一撃は、魔法に対して高い耐性を持つリッチであっても一撃で浄化するほどの必殺の威力を持つ。
自身最高の一撃を更新した、そう確信できるほどの斬撃を放ったセドリックは……その攻撃の行く末を見て、笑った。
特殊な鍛造によって鍛えられた光魔鋼によって作られた大剣の刀身が……見事なほどに綺麗さっぱりと消えていたからだ。
「化け物が……」
「ははっ、いかにも」
そのスケルトン……ズモゴロフがパチリと指を鳴らす。
するとそれだけでセドリックの身体が灰になって消えていく。
「降参をさせていただくことは……」
「……ふむ、一考に値するでしょう。主に連絡を取ります故、少々お待ちを」
こうしてズモゴロフは指揮を執っていた公爵を捕虜とし、残る公爵軍を全滅させた。
六千からなる軍団は、文字通りの全滅を喫したのであった……。




