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第41話
でも、昼休み。人の輪が落ち着いた頃、桜井くんはひょいと私の席へやってきた。「葉山さん、この前借りた本、読み終わったよ」。差し出された文庫本を受け取ると、彼は少しだけ声を落として続けた。「感想、ゆっくり話したいんだけどさ、休み時間だと、いつも途中で終わるじゃん。だから――連絡先、交換しない?」
一瞬、言葉の意味が頭に入ってこなかった。連絡先。桜井くんと、私が。「え、あ、うん」と、しどろもどろにスマホを取り出す私の手は、情けないくらい震えていた。画面の中に、桜井朝陽、という名前が追加される。たったそれだけのことなのに、世界がひっくり返るような大事件だった。
「じゃ、あとでメッセージ送るわ」。軽く手を上げて戻っていく背中を見送りながら、私はスマホをぎゅっと胸に抱きしめた。少し遠くに感じかけていた彼との距離が、手のひらの中で、また一気に近くなった気がした。




