38/44
第38話
日曜日の朝、私は七海と待ち合わせて、試合会場のグラウンドへ向かった。駅に着くと、なぜかそこには蓮くんの姿もあった。「朝陽に、絶対来いって脅された」と本人は面倒くさそうに言っていたけれど、その手には、しっかり差し入れのスポーツドリンクが握られていた。
会場は思っていたよりずっと大きくて、応援の声や笛の音で、熱気に満ちていた。観客席の端に、三人で並んで座る。やがて、選手たちがピッチに入場してきた。
ユニフォーム姿の桜井くんを見つけた瞬間、思わず息をのんだ。いつも教室で笑っている彼とは、まるで別人だった。まっすぐ前を見据える、真剣な横顔。張りつめた空気。遠目にもわかるくらい、彼はチームの真ん中にいた。
「へえ。なかなか様になってるじゃん」。七海が感心したようにつぶやく。蓮くんは何も言わず、ただ静かにピッチを見つめている。
試合開始の笛が鳴った。私は膝の上で、ぎゅっと両手を握る。頑張れ。声には出せないその言葉を、心の中で、何度も何度も繰り返しながら。




