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第37話
十月の半ば、教室の話題は、サッカー部の秋季大会一色になった。桜井くんたちの代になって初めての公式戦で、勝ち進めば県大会に出られるらしい。
「桜井、最近ずっと朝練やってるもんな」「新チームのエースだしな」。男子たちの会話が耳に入るたび、私は誇らしいような、落ち着かないような気持ちになった。
その日の放課後、昇降口で桜井くんに呼び止められた。「葉山さん、あのさ」。めずらしく、言いにくそうに視線を泳がせている。「今度の日曜、試合なんだけど……もし暇だったら、見に来てくれない?」
心臓が跳ねた。「俺、なんか、葉山さんが見ててくれたら、頑張れる気がして」。言ってから照れたのか、桜井くんは「いや、ほんと暇だったらでいいから!」と早口でつけ足した。
行きたい。でも、一人で行く勇気は出るだろうか。迷う私の頭に、七海の顔が浮かんだ。「……うん。友達と一緒でも、いい?」。そう聞き返すと、桜井くんは、ぱっと顔を輝かせて、大きくうなずいた。




