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第36話
文化祭の余韻が抜けきらないまま、季節は少しずつ秋を深めていった。あの後夜祭の夜から、私と桜井くんのあいだには、前とは違う空気が流れている。「おはよう」を交わすのは同じなのに、目が合うと、どちらからともなく視線をそらしてしまう。気まずいわけじゃない。ただ、お互いに、何かを意識してしまっている。そんな感じだった。
「ねえ、あんたたち最近、なんか変だよ」。七海が私の机に頬杖をついて、じっとりと見てくる。「文化祭で、何かあったでしょ」。な、何もないよ、と答える声が、我ながら不自然に上ずった。七海は疑わしそうに目を細めたけれど、それ以上は追及してこなかった。
言いかけた言葉の続きを、桜井くんはまだ口にしない。私も、聞けずにいる。それでも、廊下ですれ違うときに一瞬だけ交わる視線が、以前よりずっと熱を持っている気がして。答えを急かしたくないような、早く知りたいような。この宙ぶらりんの時間さえ、なぜだか少しだけ、大切に思えてしまうのだった。




